宗教こそ、プーチン・ロシアを読み解く鍵だ。ロシア分析の第一人者が、歴史と文明の観点からロシアと世界秩序の行方を展望する。

宗教・地政学から読むロシア
「第三のローマ」をめざすプーチン

定価:本体2,800円+税
発売日:2016年09月26日
ISBN:978-4-532-17603-7
上製/四六判/388ページ
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おすすめのポイント

宗教こそ、プーチン・ロシアを読み解く鍵だ。ロシア分析の第一人者が、歴史と文明の観点からロシアと世界秩序の行方を展望する。

■現代の国際関係の基礎となっているウェストファリア体制では、宗教的要素を棚上げにして、世界秩序を「主権国家」が織りなすパワー・ゲームとして構想した。イデオロギーの対立を軸にした冷戦もまた、ウェストファリア体制の継続であった。しかし、冷戦の終焉を契機に、イデオロギーに変わる新たな政治の基軸として宗教の役割が見直されることになった。とくにウクライナ自体の東西分裂という構造的問題が次第に明らかになるとともに、世界政治の焦点は、中東危機、IS(イスラム国)問題や難民問題の背景にある宗教に移ってきたといえる。
■このウクライナ危機の最大の要因は、実は宗教である。千年にわたる歴史的・宗教的経緯を抜きに、つまり文明論的・宗教的アプローチ抜きに、今のロシアのアイデンティティ、あるいはロシアとウクライナとの特殊な関係は理解できない。そして、それを理解するカギとなるのが「モスクワは第三のローマ」という世界観だ。
■「第三のローマ」という考え方は、もともと、17世紀半ば、正教とカトリックとの和解という当時の国際的な潮流に乗ってカトリック的要素を取り入れ儀式改革を進めようとした「ニーコン改革」に反発し、モスクワを聖なる都=「第三のローマ」と信じた「古儀式派」といわれる伝統重視の保守派が唱えたものである。
■「古儀式派」とこの改革をめぐる分裂は、これまでのロシア論では無視されてきたが、21世紀に入って、そしてウクライナ危機により注目されるようになった。なぜなら、この宗教改革をめぐる対立問題が、単に宗教上の争いにとどまらず、ロシアとウクライナ、つまりモスクワとキエフとの関係の問題、そしてウクライナ危機やロシアのアイデンティティというきわめて現代的な問題の源流となるものでもあり、さらに、2017年に100年目を迎えるロシア革命の解明にも、ソ連崩壊の理解にもつながる重要な要素だからである。
■プーチンは、ロシアを「正教大国」と表現し、欧米国家ですら放棄しかかっているキリスト教的な価値をロシアが体現するとして、正教とロシアのミッションについて明確に語るようになった。ロシア正教会とローマ・カトリックとの歴史的和解はその成功例の一つだ。この「第一のローマ」と「第三のローマ」との和解は、IS(イスラム国)やシリアをめぐって緊張する中東やウクライナでの現実的紛争を解決する梃子ともなっている。「第三のローマ」としてのソフト・パワーを行使することにもつながるものだ。
■プーチンのロシアはどこへ行くのか――。「ロシアは常に理論の予測を裏切る」というテーゼを提起してきた著者が、文明論的・宗教的アプローチで、政治と宗教とが「交響」する、ウクライナ危機、現代ロシア政治の深層を解き明かす。

目次

  1. 序 章 宗教と地政学からロシアを読み解く

    第1章 「モスクワは第三のローマ」--ロシアの歴史と現代   
     
    第2章 現代ロシアの政治と宗教
     
    第3章 プーチンと保守的ロシア

    第4章 ロシアとウクライナ

    第5章 プーチンがめざす世界秩序の形成

    第6章 東を向くロシア

    終 章 揺れ動く世界を読み解く基盤としての宗教

著者・監修者プロフィール

下斗米 伸夫(しもとまい のぶお)

法政大学法学部国際学科教授。
1948年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学法学博士。成蹊大学教授をへて1989年より現職。専門:ロシア政治。
主な著書:『ソビエト政治と労働組合――ネップ期政治史序説』(東京大学出版会、1982年)『ソ連現代政治』(東京大学出版会、1987年/第2版、1990年)『ゴルバチョフの時代』(岩波新書、1988年)『「ペレストロイカ」を越えて――ゴルバチョフの革命』(朝日新聞社、1991年)Moscow under Stalinist Rule,1931-34(Macmillan,1991)『独立国家共同体への道――ゴルバチョフ時代の終わり』(時事通信社、1992年)『スターリンと都市モスクワ――1931-34年』(岩波書店、1994年)『ロシア現代政治』(東京大学出版会、1997年)『ロシア世界』(筑摩書房、1999年)『北方領土Q&A80』(小学館文庫、1999年)『ソ連=党が所有した国家――1917-1991』(講談社、2002年)『アジア冷戦史』(中公新書、2004年)『モスクワと金日成――冷戦の中の北朝鮮1945-1961年』(岩波書店、2006年/ロシア語版、2010年)『図説 ソ連の歴史』(河出書房新社、2011年)『日本冷戦史――帝国の崩壊から55年体制へ』(岩波書店、2011年)『ロシアとソ連 歴史に消された者たち――古儀式派が変えた超大国の歴史』(河出書房新社、2013年)『プーチンはアジアをめざす――激変する国際政治』(NHK出版新書、2014年)『日ロ関係史―パラレル・ヒストリーの挑戦』(編著、東京大学出版会、2015年)『ロシア史を知る50章』(編著、明石書店、2016年近刊)

※本データは、小社での最新刊発行当時に掲載されていたものです。

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