「時間外労働の上限規制」対策に有効な「タイムマネジメント」とは

「働き方改革関連法」施行で急がれる具体策

橋本東光雄 日本経済新聞出版社 日経DVDプロデューサー

 ここ数年、厚生労働省が推し進めてきた「働き方改革」。「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護など、働き手のニーズの多様化」による仕事環境の変化に対応するためのプロジェクトで、2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されました。

 社会問題となっている時間外労働(残業)については上限規制が定められ、違反した場合は罰則が科せられるとあって、企業側には待ったなしの対応が求められています。

 「実際のところ、企業の対策はどこまで具体的に進んでいるのか」「一番大きな課題は何なのか」について、2019年5月に発表された「産業医を設置企業している265社対象「自社の働き方改革」に関する調査」(メンタルヘルステクノロジーズ社実施)のデータを見ながら、残業時間を減らすための具体的な手立てを考えてみました。

■時間外労働の上限を超えた場合の罰則内容

 施行された「働き方改革関連法」の中心となるのは「時間外労働の上限規制」です。これまでは事実上、無制限だった残業時間の上限を決めたこの規制は、労働基準法70年の歴史上初めての大改革となりました。

 残業時間の上限規制は月45時間、年360時間が原則となります。1日換算だと2時間まで。特例でも最長で月100時間未満、年720時間以内です。違反企業には罰則として6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。中小企業に対しては1年間猶予され、2020年4月1日からの施行となります。

 日頃から残業が常態化している職場にとっては、すぐにでも対策を行わなければ、違反してしまったり、仕事が回らなくなったりする恐れも出てきます。

■働き方改革にどう取り組めばよいのか

 急を要する「働き方改革」への取り組みですが、実際はどの程度進んでいるのか、他社の動向が気になる方も多いでしょう。メンタルヘルステクノロジーズ社実施の「産業医を設置している企業265社対象「自社の働き方改革」に関する調査」(2019年5月発表:調査対象期間2019年3月1日~3月31日)が参考になります。

 自社の働き方改革の進み具合については「進んでいる」が19%、「どちらかというと進んでいる」が43%となり、計62%の企業が「働き方改革が進んでいる方だという認識がある」という結果です。一方、「進んでいない」は5%、「どちらかというと進んでいない」は33%で、計38%が「進んでいない」と答えています。

 約6割の企業が「進んでいる」と答えている一方で、「働き方改革を導入する際の課題は?」という次の質問に対して、「どう取り組んだらよいのかわからない」と答えた企業がほぼ同じ割合の61.9%にも上っています。

 この2つの調査結果を合わせると、「働き方改革をやらなければならないのは十分理解し、進めたいが、まずは何から取り組んだらよいかわからない」というのが、ほとんどの企業にとっての本音なのかもしれません。

■「残業時間を減らす」のが大きな課題

 では、一番大きな課題は何でしょうか。「自社の働き方改革を実行するにあたってどんなことが課題だったと思うか」という調査では、半数以上となる51.7%が「残業時間」を挙げました。予想通り、どの企業も時間外労働対策に頭を悩ませているようです。

 仕事量は変えずに労働時間を減らさなければならないわけですから、そこで求められるのは仕事の効率性をあげることです。長時間労働を生み出す非効率な部分に目を向け、その解決のための意識改革や仕組み導入を行っていく必要があります。

 言うまでもなく、仕事の効率には個人差があり、同じ仕事を与えても、人によってそれにかかる時間に差が出ます。能力差から来るものもあれば、意識の差、性格の差、あるいは家庭の事情から差が生まれることもあるでしょう。

 職場でよく見られるケースを、研修用DVD『タイムマネジメントで働き方改革』全2巻(日本経済新聞出版社)に収録されている2つのドラマからご紹介しましょう。

■「残業で帳尻を合わせる」が癖になっている営業マン

 1つ目は、時間外労働が常態化している入社4年目の営業担当社員、安原直樹さんの場合です。

DVD『タイムマネジメントで働き方改革』第1巻より

 毎日のように夜遅くまで仕事をする安原さん。書類作成やデータ入力など自分で時間を決められる仕事を先延ばしにしてしまい、書類の完成はいつも提出期限ギリギリ。これまで残業によって期限に間に合わせており、「残業すればなんとかなる」という意識を持っています。時間外労働が常態化しており、「時間内に仕事を終わらせよう」という意識に欠けているのです。

 安原さんのようなタイプは、仕事のやり方や意識を変えない限り今後も残業を繰り返し、時間外労働の上限を超えて働いてしまうリスクがあります。また、任せられた仕事を時間内に終わらせられず、同僚や上司にしわ寄せがいくリスクも抱えているといえるでしょう。

■予定外の仕事に対応できない子育て中の社員

 2つ目は、子育て中の中堅営業担当社員、長峰沙織さんのケース。子どもを保育園に預けているため勤務時間は17時までで、残業はできません。

 通常は就業時間に合わせて予定を組んで、時間内に終わるように頑張っていますが、問題は急な仕事や予定外の仕事が入った場合。会議や打ち合わせが予定より長引いてしまう場合があり、時間内に仕事が終わらないことがあります。

 終わらなかった仕事は同僚に頼む形になってしまい、本人もそこに負い目を感じています。同僚や上司が代わりに仕事を引き受けることになるので、長峰さん以外の社員の時間外労働が発生し、不公平感を醸成する(生む)おそれがあります。それによる人間関係の悪化で追い詰められ、休職したり、退職したりするリスクもあります。

DVD『タイムマネジメントで働き方改革』第1巻より

■「タイムマネジメント」が解決できること

 2つのケースとも、「タイムマネジメント」の手法を取り入れることが解決のひとつの糸口になります。タイムマネジメントはその名のとおり「時間管理」ですが、職場で行う場合はそのまま「仕事マネジメント」と言い換えることができるでしょう。

 安原さんの場合、書類の提出期限の直前まで書類作成を先延ばししてしまう傾向がありますので、タイムマネジメントで書類提出日を確認し、書類作成をする実行日を決めてスケジュールに組み込みこむことで、提出日前の残業時間を減らすことが可能になります。

 長峰さんの場合、予定外の仕事が入ることを考慮してスケジュール管理をしていないことが問題でした。一般的に仕事は「アポイントメント(打ち合わせや会議など時間が決まっている仕事)」、「タスク(書類作成やメールなど時間を自分で決める仕事)」、そして「予定外の仕事(急に対応しなければならない仕事)」の3つに分けられますが、タイムマネジメントの手法では、この「予定外の仕事」も考慮しながらスケジュール管理をします。

 仕事マネジメントが苦手な社員の周囲では、「しわ寄せ」や「肩代わり」が発生してしまうことがあります。そうなると、時間外労働上限規制の問題だけではなく、職場の人間関係の悪化を招くリスクも生じます。そういったリスクを避けるには、個人レベルではなく、職場全員で意識改革と実践ノウハウの習得に取り組む必要があることは言うまでもありません。教育研修によって全員がタイムマネジメントや仕事マネジメントの手法を身につけることで、職場全体の残業を減らし、様々なリスクも避けることができるのです。

 タイムマネジメント手法を学ぶ場合、日時が特定されてしまう講師による研修ではなく、全社はもちろん部署やチームごとに気軽に行えるDVD研修が便利です。

 研修用DVD『タイムマネジメントで働き方改革』(日本経済新聞出版社)は、監修者で時間管理のプロフェショナルである水口和彦氏が、サラリーマン時代に確立した実務に取り入れ易い手法を、具体的な事例をドラマ演出で解説しています。

日経DVD『タイムマネジメントで働き方改革』全2巻

関連記事

もっと見る

now loading