第26回 ゆるいぬいぐるみ

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ?! リターンズ

大宮エリー

ぬいぐるみは絶対買わないって決めている。というのも、あれ、生きていないけどペットと同じだ。だから、買ったら大事にしないといけない。でも不思議なもので、お店で見ると、わあ、いいなあって思う。以前、家具屋さんのソファーに座っていた、大きな白いクマのぬいぐるみを買ってしまった。それは、肌触りがよくて、もふもふして、つるつるしていて、抱くと、ふんわり。やわらかく、四肢がしなやかに動くので、いろんなポーズをさせられる。

こんなのと一緒に寝たらいいなあ、と思って買ったのだが、やっぱり、家に帰ってくると、現実に引き戻されるのだ。「なんだ、この、私、女の子でもあるまいし」と興ざめ。だって、その当時は30代半ばであったが、いい歳して、白いでかいぬいぐるみとベッドに入ってるって気持ち悪いやろ! と思ってしまった。あ、それが似合う女性ならいい。年なんか関係ない。でも、私、、似合わない。なんか急に恥ずかしくなってしまい、おかんにあげた。おかんは、どう使っているのか知らない。怖くて聞けない。でも、予想すると、枕にしていると思う。そういう人だ。ごめん、しろくまくん。おかんの枕になってしまって。毎回、重いだろうに。でも、いい夢を見させておくれ。わが、母に。

さて、本題に入ろう。それ以来、絶対、どんなに可愛くても、ぬいぐるみは買わないと決めていた。あれには魔法がかかっていて、家に連れ帰ると、途端に、魔法が消えて、「ん? これ、いる?必要?」となるのは目に見えていた。しかも、もらい手がなかなか出てこないし、捨てるのも可哀想だし。

だが、ある日、なぜか買ってしまった。トナカイなのかクマなのか、全くわからない、目が黒くて丸い動物。しかも、微妙にダサい。これが、いいなと思った。下の箱がお菓子になっていて、グッズっぽいから、いざ、ごめん!と断捨離してもいいかもしれない。いや、ものは大事にしないといけないのだ。わかってる。捨ててない。小さいからいつまでも部屋にいても気にならなかった。現に、今もいるわけで。

ただ、シカなのかクマなのかわからない。顔は完全にクマ。耳も丸い。でもなぜかツノが生えている。うーん。。。たぶん、クマ作りがこの会社のメインのお仕事で、いつも作っていたけれど、クリスマスシーズンになり、「よし!今だけ、あのクマに、ツノをつけて、トナカイとして売っちゃおう!」というノリになったんだと思う。「だ、大丈夫ですかね?クマですけど」「ツノついてたらトナカイだよ、間違いないよ」てな会話のもと実行。そのようなとってつけた感じで誕生したっぽいぬいぐるみは、嬉しそうに笑っている。そこがまたいい。

そしてどうして手足が苔の色なんだろう。この配色もいい。ツノをつけたなら、手足もそれっぽく、蹄にすればよかったのに。でも、苔色の手足がまたいい。だから例外的に買ってしまって、仕事に疲れるとこの不思議な動物を見る。「で、おまえは、クマだったのかい?」

 

【告知:このコラムがいよいよ本に!】

「日経MJ」での連載開始から2年と4か月。1月29日、「大宮エリーのなんでコレ買ったぁ?!」がついに単行本になりました。連載、そして単行本化の裏話もがっつり加筆。脱力系ゆるゆるエッセイで2019年をエンジョイしよう!

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(新潮文庫)、『なんでこうなるのッ?! 』(毎日新聞出版)。コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。
現在、「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

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