第24回 ビーカー

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ?! リターンズ

大宮エリー

 なんでコレ買ったぁ?!と自分でものすごく頭を抱えるのがこれである。ビーカー。私は実は東大の薬学部の卒業である。が、授業にも実験にもついていけなかった落ちこぼれである。あまり大学にいい思い出はない。そして、いつも、やだなぁと思って触っていた実験器具。みんなは、きちんと然るべき、よしとされる実験結果がでる。青くなるときは青くなるし、白濁するときは白濁する。私はいつもみんなと違う結果になりあたふたしていた。実験が終わると大量の洗い物。ビーカーを割らないように、1日に100個、洗ったこともある。あんなに、テンション上がらなくて、辛い象徴であったはずのビーカーをなぜ買ったのか。

 その前にみなさんに聞きたい。これ、なんで売ってるの?? 売ってるということは需要があるからだと思うのだけれど、これを買う人はどういう気持ちで、何が良くて買うの? そして売る人は、どういうところがいいと思って売ってるの? たぶん、雑貨屋に、しかもおしゃれな雑貨屋にあったから、販売元の狙い通り、可愛い!とヒットした、胸撃ち抜かれた人が買うんだと思う、でいいだろうか? あってる? 「興味深い」とか、「リケジョに憧れてたのよね」という理由で、まさか買わないよね? もっというと、「いやー、計量器として、最高だよ!」と料理にいいと思って買ってないよね? 料理っていうか、、、薬品のイメージしかないから!この容器は!

 とすると、たぶん、理系じゃない人が、なんか、レトロで可愛い、とか思って買うんだと思う。じゃあ、私はなぜ買ったのか。もしかしたら、理系の辛さが、年齢とともに抜けてきたのかもしれない。そして、少し可愛いかもと文系脳での見方ができるようになったのかもしれない。もしくは、まさかの、、懐かしさ?
 これ、たぶん、細かい考察で申し訳ないのだが、本当の、ガラスだったら、絶対に買っていない。もろに実験だもの。すぐ薬品と結び付いてしまう。横にフラスコがあって、マイクロピペットがあって、と。でも、プラスティックなところが、「フェイクだよ!」という面白さを私に感じさせたのだ。たとえて言うなら、思いつきであるが、ブルマが、同じ色なんだけど、毛糸とかレースでできてるとか。ブルマフェイク。

 全然いいたとえじゃないね……。でも、嫌な思い出と、時が経って振り返る面白さは似ている。なにせ、冬でもブルマをはかされて体操させられていた小学校時代の理不尽。「恥ずかしいだろ、この格好は」と思いながらもなぜかあれじゃないとダメというセクハラまがいの理不尽。今思えば意味わかんないなあと。それらが、時が経ち、素材が違うと、ああなんか、そんなこともあったよね、あははと思えるような。

 ビーカーとブルマ。なんだかなぁ、、、。

 

【告知です! このコラムがいよいよ本になります!!】

「日経MJ」での連載開始から2年と4か月。1月29日、「大宮エリーのなんでコレ買ったぁ?!」がついに単行本になります。連載、そして単行本化の裏話もがっつり加筆。脱力系ゆるゆるエッセイで2019年をエンジョイしよう!

*本書の刊行にあわせて、イベントも計画中。日本経済新聞出版社のサイトでも、順次ご案内いたします。

 

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(新潮文庫)、『なんでこうなるのッ?! 』(毎日新聞出版)。コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。
現在、「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

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