2025年大阪万博で活性化する日本経済

1964年東京五輪、1970年大阪万博の再来に

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所長 嶋中雄二氏

 2020年のオリンピック・パラリンピック終了後に日本経済はどうなるのか、誰もが興味を持つテーマですが、きちんとしたデータと経済理論に裏付けされた景気予測本は限られています。日本経済新聞夕刊「目利きが選ぶ3冊」で5ツ星の評価を得て、大きな反響を呼んだ書籍『第3の超景気 ゴールデン・サイクルで読み解く2025年』の著者 嶋中雄二氏の前回の記事「東京オリンピック後の失速は不可避」は多くの方に読まれました。

 2025年、大阪での万博開催が決定したことを受け、改めて今後の景気動向についてお話をうかがいました。

経済波及効果は約2兆円

 2025年に大阪で、1970年以来55年ぶりに、国際博覧会(万博)が開催されることが、11月23日、正式に決まりました。事前の報道等では苦戦も伝えられていただけに、日本の社会にとっても経済・株式市場にとっても、非常に大きなポジティブ・サプライズとなりました。

 同時に、私が説いてきた2025年までの日本経済の予測の説得力が、これによりさらに強化されたことも歓迎したいと思います。本年4月に刊行した拙著『第3の超景気 ゴールデン・サイクルで読み解く2025年』の予測シナリオの重要なパーツでもあった「2025年大阪万博」が本決まりとなったことにより、シナリオ自体の現実味が一段と増したともいえます。

『第3の超景気』の中で私は以下のように述べています。

「2025年に大阪万博がやってくれば、1964年の東京オリンピックの6年後に大阪万博が行われたときの状況に似てくると考えられます。

 前回の東京オリンピック後にやってきた昭和40年不況は、戦後最悪の不況といわれるほど厳しいものでした。この不況を脱するために、政府は、国債発行による財政出動や日銀特融などを行い、また資本の自由化の外圧を受けた製造業は、国際競争力を上げようと競って大型設備投資を行ったのです。

 その大型設備投資がいざなぎ景気を呼び、57ヵ月という長い拡張期を誇ったわけですが、このいざなぎ景気自体、大阪万博の開催に向けて上昇を続け、万博開催中の1970年7月にピークアウトしました。

 再び万博の誘致に成功すれば、今回の万博は訪日外国人も非常に多くなることが予想され、国際的な交流も一層盛んになると思います。東京オリンピック・パラリンピックと大阪万博という世界中の注目を集める大イベントを機会に、アジアやオセアニア、ヨーロッパや米国など、世界中から日本に訪れる多くの人との交流も深めたいですし、日本経済にとっても新たな段階へ飛躍するきっかけになることが期待されるわけです。

 2025年までは、建設投資循環ともいわれるクズネッツ・サイクルが上昇していく時代で、それが大阪万博まで続いていく、と私は考えています。もちろん、2027年に営業運転開始の予定であるリニア中央新幹線の建設工事も、その頃が最盛期になっていくと考えられます。

 その大阪万博が、本当に実現されることになったのです。経済産業省の「2025年国際博覧会検討会報告書」によれば、2025年の万博は、開催期間が2025年5月3日から11月3日の全185日間になり、会場は、大阪湾の人工島の夢洲内(面積155ha)で、開催にかかる費用は、会場建設費が約1,250億円、運営費が約830億円、入場者想定規模は3,000万人とされ、当初の試算では、消費支出と全国への経済波及を含めると、1.9兆円とされていましたが、「2025年日本万国博覧会誘致委員会」の直近の発表によると、想定来場者数は約2,800万人、経済波及効果は約2兆円となっています(表1)。

 ちなみに、1970年大阪万博時の入場者数は、実に6,422万人と多く、国民の2人に1人が入場した勘定になりますが、当時外国人は約170万人しか入場していません。昨今のインバウンド・ブームを考えると、日本人、外国人を含めて2,800万人というのは、かなり控えめの試算といってよいのではないでしょうか。

大阪は復活の原動力

 2019年10月の消費増税を前提とし、同年が天皇陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位に伴う改元の年であり、統一地方選、参院選という選挙の年であり、かつ大阪でのG20(主要20カ国・地域首脳会合)サミットやラグビーW杯の開催年であることを踏まえれば、19年9月までの景気上昇はあらかじめ想定できます(図1)。

 しかし、東京五輪・パラリンピックの建設特需は19年内に一巡すると見込まれ、消費税増税前の駆け込み需要の反動や、増税自体の需要抑制効果もあり、米国等海外経済の失速がないとしても、19年10月頃からの景気の弱含みは、国内の景気対策にもかかわらず、起こり得ると考えられます。もちろん、2020年の夏(7、8月)にかけては大いに盛り上がるとみられるため、19年秋から20年夏までの日本の景気は、下り坂とはいっても、高水準で推移しますが、問題はその後で、おそらく2021年の晩秋(例えば11月頃)まで、1964~65年の昭和40年不況を思わせるような厳しい「五輪後不況」が続くのではないでしょうか。

 そこに、今度は「2025年大阪万博」の到来という「いざなぎ景気」の再来ともいうべき、次の上り坂に向けての道標が出現したのです。やはり大阪夢洲への誘致が予想されるIR(統合型リゾート)が24年、そして27年開業予定の東京―名古屋間の超電導磁気浮上式鉄道(リニア中央新幹線)の工事の最盛期も24、25年とみられます。

 政府の公共投資削減に加え、相次ぐ自然災害、さらには米国トランプ政権による中国との貿易戦争等により、足元の2018年は想定より下振れしたものの、2025年までの『第3の超景気』シナリオは決して間違ってはいなかった。そんな確信を私に抱かせた、今回の大阪万博の正式決定です。

 詳しくは、拙著『第3の超景気 ゴールデン・サイクルで読み解く2025年』をご覧下さい。

 

嶋中雄二(しまなか・ゆうじ)
三菱UFJ モルガン・スタンレー証券参与 景気循環研究所長、景気循環学会副会長。内閣府景気動向指数研究会委員。

1955年東京生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒。三和銀行入行。83年退職後、フランス政府給費交換留学生としてリヨン経営大学院留学、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員、86年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。日本経済研究センター研究員、三和総合研究所、UFJ 総合研究所、三菱UFJ リサーチ&コンサルティングの各投資調査部長兼主席研究員、三菱UFJ 証券参与景気循環研究所長を経て、2010年から現職。

主な著書に『これから日本は4つの景気循環がすべて重なる。』『ゴールデン・サイクル』『日本経済の油断』『メジャー・サイクル』『複合循環』(いずれも東洋経済新報社)、『太陽活動と景気』『先読み!景気循環入門』(いずれも日本経済新聞出版社)などがある。