投資の可否を判断する5つの指標とは

初心者でもわかるコーポレート・ファイナンス入門(第2回)

いちよし経済研究所シニアアナリスト 高辻成彦氏

 企業価値評価やファイナンスへの関心の高まりを背景に、この分野について解説した多くの書籍が刊行されています。しかしいざ初心者が読むとハードルが高く、理解しにくいものが多いのが現状です。

 企業の経営企画担当者や、大学・ビジネススクールで学ぶ学生などへ向けて、初心者にもわかりやすくまとめた『アナリスト直伝 使えるファイナンス入門』の著者 高辻成彦氏に、コーポレートファイナンスの基本について、連載で語っていただきます。

 第1回で、コーポレートファイナンスの特徴に触れていただきましたが、第2回では、投資の可否(採算性)を判断するための代表的な5つの指標を紹介していただきます。

NPVは額がプラスになるかを判断

 投資に関する最も代表的な指標がNPVです。NPVとは、「正味現在価値(Net Present Value)」のことで、「プロジェクトが生み出す現在価値の合計」を表します。NPVは、PV(現在価値)から初期費用(投資額)を差し引いて求めます。投資判断を行う上では、

 NPVがプラスであれば投資すべき
 マイナスであれば投資すべきではない

 となります。

IRRNPVがゼロとなる割引率

 NPVと同様に重要な指標がIRRです。IRRとは、「内部収益率(Internal Rate of Return)」のことで、NPVがゼロとなる割引率のことです。投資にあたって、NPVがゼロとなる割引率はいくらかを求め、その割引率が収益率のハードルレート(投資を行う上で最低限必要とされる利回り)より大きいかどうかを検証します。投資判断としては、

 「IRR > ハードルレート」ならば投資すべき
 「IRR < ハードルレート」ならば投資すべきではない

 となります。

回収期間法は基準年数より回収期間が短ければ投資実行

 回収期間法は、「投資額をキャッシュフローの合計額で回収するまでの期間が、設定する基準年数を下回るプロジェクトを採用する方法」です。この方法のメリットとしては、割引率という概念を使わずにシンプルに回収年数を計算できることが挙げられます。
 一方、問題点としては、割引率を使っていないがために、時間価値の考え方が抜けていることです。また、回収期間後のキャッシュフローをまったく考慮していません。さらには、基準年数に関しては企業側の決め打ちとなります。

割引回収期間法は回数期間法に割引率を適用

 先程の回収期間法の問題点を一部、克服したのが割引回収期間法です。
 割引回収期間法とは、「投資額をキャッシュフローの現在価値の合計額で回収するまでの期間が、設定する基準年数を下回るプロジェクトを採用する方法」です。回収期間法ではキャッシュフローで計算しましたが、こちらではキャッシュフローの現在価値で計算します。

収益性指標(PI、Profitability Index)は1より大きければ投資実行

 次に取り上げる指標は、「収益性指標(PI、Profitability Index)」と言われるものです。収益性指標とは、「投資プロジェクトのキャッシュフローの現在価値の合計額が、初期投資額を上回っているかを検証する方法」です。この指標は、

 収益性指標(PI)が1より大きければ投資すべき
 収益性指標(PI)が1より小さければ投資すべきではない

 となります。さらに式から分かることとして、PIが1より大きい時は、NPVもまたプラスになっています。

 今回は投資に関する5つの指標をご紹介しました。いずれの指標も絶対的な指標というわけではありません。NPVとIRRは代表的な指標ですので、覚えていただいて損はないと思います。これらの指標は事業の投資判断をする上でのツールですが、企業価値評価をする場合には、また別の方法があります。しかしながら、基本的な考え方としてはNPVが出発点になります。

 筆者はこの度、『アナリスト直伝 伝えるファイナンス入門』(日本経済新聞出版社)を出版しました。この本では、ファイナンスの基礎について、できるだけ端的に平易な表現でまとめています。ぜひ、ご一読頂ければ幸いです。

 

高辻 成彦(たかつじ なるひこ)略歴
いちよし経済研究所(東証1部・いちよし証券の調査部門)のシニアアナリスト。


立命館大学政策科学部卒、早稲田大学ファイナンスMBA。主な職歴は経済産業省、ナブテスコ(東証1部)の広報・IR担当、ユーザベース(東証マザーズ)のシニアアナリスト。経済産業省在籍時は経済波及効果測定のための経済統計である産業連関表の時系列表作成に参画。ナブテスコの広報・IR担当時は日本IR協議会によるIR優良企業特別賞の所属会社初受賞に貢献。ユーザベース在籍時は業界・企業情報サービス・SPEEDAの業界レポート作成や、経済ニュースアプリ・NewsPicksの経済コメント活動に勤め、最古参ユーザーとして8万人以上のフォロワーを得る。現職では企業取材活動をもとに年間200本以上のアナリストレポートを発行。日経ヴェリタスのアナリストランキング、トムソン・ロイターのアナリスト・アワード・ジャパンにランクイン。

著書に『アナリストが教える リサーチの教科書 自分でできる情報収集・分析の基本』(ダイヤモンド社)がある。主なTV 出演歴はBS ジャパン『日経モーニングプラス』など。日本経済新聞や日経ヴェリタスなどでのコメント掲載多数。