第18回 走り回るもの、動き回るもの

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ!? リターンズ

大宮エリー

走り回るもの、動き回るものを買ってしまう。それも小さいおもちゃの。ただ、ミニカーではない。ミニカーはどうも興味がない。本物の車の方がいいと思ってしまう。ミニチュアにあんまり惹かれないのだ。本物がいいじゃんと。でも、動き回らないものが、動き回るのが好きなのだ。たとえば、誕生日ケーキ。あれが、ネジを回すと、異様な速さで、あたりを動き回る。これが、楽しい。そんなこと、ありえないから。だからこういう場合は、本物ではなくて偽物でいい。まあ、本物は走り回るわけないので。

それからロンドンで買ったのがこの、火をふく修道女。すごい。本当にこれは自慢のおもちゃである。不思議な動きで動き回る、走り回るだけでも不気味なのに、火をふくのだ。どうして修道女が火をふくのかわからないが、たぶん、恐竜のおもちゃとか作っていて、これ、修道女でもいいじゃんとなったのかもしれない。火もフェイクではなく、銀色の小さな稲妻みたなものが口から出る。この詳細はわからないが、配線がショートしたりするときに出る白い火花だ。パッケージも可愛くてお気に入りなのだが、そういうものに限ってみんなのリアクションが全くなかった。わからない。これ、いいじゃん!ってすごく思ったのに。

でも、最近思うのが、みんながいいじゃん!て思わないから楽しいのかもしれない。自分だけがこいつの良さを知っている、みたいな。その醍醐味たるや。みんなは気づかない魅力。ライバルゼロ。みんな欲しくないから誰も持っていない。この優越感!

なんでも動けばいいかといえば、そうではない。やはり可愛いものがいいのだ。お寿司のミニチュアが動いてても楽しくない。お寿司なんてよくマグネットで外国人向けにあるものね。そういうのじゃなくて、、、その辺がうまく説明できない。

ただ不思議なのは、ルンバとか全然惹かれないということ。動き回るし走り回るし、そして、実用的である。でも、人のうちに行ってルンバがあると、なんだか、舌打ちしたい気持ちになる。どうしてだか考えたが、こう気が散るというか。何かこう、じわーっとずっと動いてられると、それもある程度大きいと、自分にとって精神的な脅威になることがわかった。

だから、動いているものを数匹、そう、ヤドカリをテーブルに乗せて遊ぶようなのが好きだ。そしてそれらはすぐ止まる。ネジを巻かないと動かないし、ヤドカリはそっとして恐怖心を解かないと動かない。そういうものが好きだ。共感してくれる人、どれくらいいるんだろう。

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(毎日新聞出版)、コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。そして最新刊『なんでこうなるのッ?!』(毎日新聞出版)が好評発売中。
現在、「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

関連記事

もっと見る