第15回 Happy Birthday のロウソク

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ!? リターンズ

大宮エリー

ケーキに差すロウソクをつい買ってしまう。なんで買っちゃうんだろう。使わないのに。見つけると買ってしまう。理由を考えてみたけれど、おそらく誕生日に対するトラウマからだと思われる。

誕生日ってお祝いしたい気もするんだけれど、お祝いして欲しいと心の底では思っているくせに若い頃は言い出せなかった。よく友達で、「私、こんど誕生日なんだー! お祝いしてー!」って言っているひとがいて、そういうの、私もできたらいいなと思っていたのだが、なんだか恥ずかしくて言い出せなかった。自分の誕生日なんて、、って思っていたのだ。

いまはもう歳をとったので、誰かにこそっと、「お祝いしてもらえないかな、いっしょに一杯つきあって」と、言えるんだけれども、その当時は言えなかった。本当は、みんなみたいに、「50人くらい集まってくれてさあ」「サプライズパーティーしてくれて、すごいびっくりしてー」というのをいいなぁとは思っていたのだが、でも、少し気後れするし、めんどうだなというのもあった。

すごく覚えているのは会社員時代、誕生日当日、そわそわしながら出社したときのこと。でも誰からもおめでとうは言われない。みんな知らないしね。私の誕生日なんて。自分も誕生日だなんて言わなかった。誕生日なんて関係ないって、仕事をがむしゃらにしていた。けれど、残業しているうちに、いつのまにか社内が自分だけになり、自分のパソコンだけがぼおっと青白く光るフロア。もう少しで企画書ができる、と思って、ふと時計を見たら、23時55分。そのとき、初めてあっと思った。

「あと5分で誕生日が終わっちゃう、、、」

これでよかったのだろうか、と急にさみしくなる。日付が変わるまでは自分の誕生日だ!とエレベーターへと走った。高層ビルのオフィス2階はコンビニ。ダッシュで駆け込む。

「あった、、」

プラスティックケースに入ったカットのショートケーキ。一人分のイチゴのショートである。それをフロアで一人で食べた。その、トラウマである。

もし、そういう可愛いロウソクがあったら、少しでもお祝い気分、特別な日になる。自分で自分のことを祝えるではないか!

だから、数字のロウソク、0から9まで売っているものを全て買ってしまう。こうしておけば何歳の誕生日でもこれで、盛大に一人で祝えるのだ。たとえそれがコンビニのケーキだとしても。

今は、意地を張らないで、寂しいとか、祝ってと言えるのだけれど、まあ、その名残で今も、見つけると買ってしまうおめでとうのロウソクであった。

 

[告知です!]大宮エリーの写真展

(個展)三宿 CAPUSLE(8月19日まで)
「Spirit charge写真展II」——スピリットをもらえる展示。スピリチュアルスポットとして名高い「マウントシャスタ」、クリスタルカイザーがとれる採水地、そしてなかなか呼ばれないとたどり着けないというアメリカの聖地。そこでの写真をみて、こころリフレッシュ、パワーチャージしてください!

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(毎日新聞出版)、コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。そして最新刊『なんでこうなるのッ?!』(毎日新聞出版)が好評発売中。
現在、「サンデー毎日」「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

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