第13回 あの日しなかった花火

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ!? リターンズ

大宮エリー

切ないタイトルである。ドラマになりそうな。歌とか。そう、なんでコレ買ったッ?! 誰しもあるだろう、「あの日、しなかった花火」。でも友達は言う。「でもさ、でもさ、それはあるとしても、ないよ、、、それを保存しておくっていうのはさ」

そうだろうか。だって、いつかするかもしれないじゃん! どんな花火か、火をつけてから捨てたいじゃん! でも友達は無情にも言った。パッケージの裏を見ながら。
「ていうかさ、、2012年のなんですけど」
わお!6年前である。Time Capsuleである。花火、タイムカプセル、なんとノスタルジー。

「んな感傷に浸ってるんじゃない! 捨てろ! とっくに湿気ってるわ!」
「え!」

湿気ってるの? もうダメなの? 火をつけても花火つかないの?
これは、デザイン花火というもので1本1本が高い。その代わり、すごく長いこと火がついているものだとか、火花がデザインされたものだとか、いろんな色が次々に出てくるものだとかがある。確かそうだったはず。

「また買えばいいじゃん」
「でもぉ」

小さな女の子の、「でもぉ」は可愛いが、42歳の「でもぉ」は、キモイ、たちがわるいのはわかっているのだけれど、どうしても捨てられないのである。

「試してから捨てたい」
「じゃあ、早く試しなよ」

でも、である。花火って、やっぱ、やるのに心の準備がいる。だから、やりそびれてしまったのだ。6年間も。毎年、やりそびれる。それは、花火には整えられねばならない状況があるのだ。それが整わない限りやってはいけない不文律があるのだ。それが整わないのにやるとどうなるか。

——虚しくなる。

ま、それも風流ではあるが。つまりどういうことかというと、誰とやるかである。
願望第1位、彼氏とやる。願望第2位、友達とやる。(できれば浴衣で)。願望第3位、海辺とか山とかキャンプとか夏っぽい場所でやる。

さあ、悲しいかな、6年間そういう夏がなかった。過去に恋人がいたとしても、
「え?花火? めんどくせー」
で、撃沈。なかなか難しいのである。友達を誘ったとしても、飲んだり食べたりして、忘れたりめんどくさくなったりする。
「ねえ、ねえ、花火、覚えてる?」
「え?またこんどにしようよ」
「う、うん」

そうして時が経った。今年こそ、今年こそ!
新しい花火と、このタイムカプセル花火を、やるんだ!

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(毎日新聞出版)、コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。そして最新刊『なんでこうなるのッ?!』(毎日新聞出版)が好評発売中。
現在、「サンデー毎日」「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

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