第12回 ドラえもんの財布

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ!? リターンズ

大宮エリー

これ、なんで買ったか。これ、デザインなのである。すごいプロダクトだなと思ったのである。まず、素材。大事である。もしも、このドラえもんがビニール素材だったら、絶対に買っていない。布でも買っていない。だって、なんかチープだから。ビニールはてかてかしてしまってなんだか好きになれない。防水のポーチで十分である。ドラえもんはビニールではだめだ。布もなんだかThat’sプリントっていう感じで好きではない。エコバッグとかだったら布でプリントでもいいかもしれない。でも財布はそれではつまらない。

だがこの財布、なんとフェルト生地なのだ。ふわふわクッションの手触りなのだ。これがまず心惹かれたポイント。癒されるではないか。そして必ずやすぐに毛がけばけばになり、つるつるになり、黒ずんでいくであろうことが予想されるプレミア感。小さな子供が好きなぬいぐるみを大事にしていて、ハゲてツルツルになっている愛おしさ。年季の入り方。あれを思い出す。そうか、ここまで書いてわかった。ぬいぐるみ素材だからいいんだ。私は大人だからぬいぐるみを抱きしめて歩くことはできないが、このぬいぐるみ生地の財布を握りしめて歩くことはできるのだ。すごい。

第2にこの財布がよくできているのが、色である。いい色! なかなかこういういい色を出すのって難しい。薄すぎても濃すぎてもいけない。濃いともう可愛くない。薄いと、幸が薄そう。薄い水色でいいのは、サンリオだけである。キキララのララちゃんまでいくと、ダメなのである。この絶妙な水色。ドラちゃんブルーが秀逸。

そして第3に、笑顔。このドラえもんの笑顔、完璧である。すごく媚びるわけでもなく、でも、サンリオのキャラたちのように少し無表情っていうわけでも、ほよーんという微笑みでもない。ちゃんと笑っている。この笑顔がなかなか難しい。やっぱ笑顔の財布って嬉しい。

さらに薄々みなさんお気づきであろうが、この財布の作者はどうしてどうして、こうしたのだろうか。鈴、首についているのに、ドラちゃんの頭から紐をつけてその先にまた鈴をつけちゃっているのである。このささやかな暴走に私は釘付けになった。

「!」

そして思った。普通、ここ、赤い丸にして、しっぽにしない?と。でも、頭から紐を出さざるを得ないデザインになり、なんとなく、「鈴、もいっこつけちゃえ」となったのか、「余ったからまた鈴でいいや」となったのか。頭からなら、忠実に言えば、タケコプターではないか?と思ったが、紐だし、紐コプターになってしまう。

とにかくこの最後の大胆さ、といいましょうか、鈴もういっこのお得感というか。

そんなこんなで私は心を鷲掴みされたのであった。

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(毎日新聞出版)、コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。そして最新刊『なんでこうなるのッ?!』(毎日新聞出版)が好評発売中。
現在、「サンデー毎日」「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

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