絶対に押さえておきたい! 決算書を読み解く3つのコツ

長谷川正人の「決算書のススメ」<第3回>

大手コンサルティング会社 上席コンサルタント 長谷川正人

 変化の多い時代には、刻一刻と変化する企業の状態を把握するために、決算書を読み解くスキルが重要になっています。『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』の著者、長谷川正人氏に、決算書を読むためのコツを全3回で解説いただく連載の最終回です。

 第1回で書いたように、決算書が読めるようになるためには細かな勘定科目(例「投資有価証券」は何を意味するか)を覚えたり、簿記の知識が必要ではないかと思ったりしている人もいるようですが、決してそんなことはありません。
 また第2回に書いたように、自分がよく知る企業の決算書を実際にたくさん読み、数字の大小・高低・変化の意味を、その会社が展開しているビジネス(うまくいったり、いかなかったり)と関連づけて理解することが決算書を読めるようになる早道です。
 そうはいっても、これまであまり決算書になじみのない人が具体的にどうしたらいいのか、について具体的なアドバイスを3点お伝えします。

1.まずは最低限の用語を理解する

 難しい用語を覚えたりする必要はありませんが、最低限の基本用語の意味くらいは頭に入れておきたいものです。

2.「決算説明会資料」に目を通

 上場企業であれば、ホームページのIR(Investor  Relations=投資家向け広報)コーナーを見ると、大量の資料があるとわかりますが、初心者は、このうちどれを見たらいいのか迷うようです。

 筆者の一押しは、3ヶ月ごとの決算発表のたびに公開される「決算説明会資料」です(会社によっては6ヶ月に一度のところもある)。

 多くのIR資料のうち「決算短信」「有価証券報告書」などは、様式が決まっており、大半が文字と数字の羅列で記載されているため、初心者には敷居が高く感じられるようです。

 それに対して「決算説明会資料」は公表する/しないも自由、様式も決まっていませんが、多くの上場企業(大企業の大半)は、商品・サービスの写真やグラフなどを多用して、自社の決算をビジュアルにわかりやすく説明しています。決算書の知識が乏しくても、ざっと目を通すだけで、「この会社の業績はどれくらいよかったのか、悪かったのか。今、何が課題で今後(1年間ないし中期に)何を目指して、どのような施策を取ろうとしているのか」が一目で理解できるようになっています。

3.実際に商品・サービスを使ってみる

 その企業が提供する商品・サービスを実際に自分で使ってみれば、客単価や満足度など、自分の使用実感と関連づけて決算データを解釈しやすくなります。それが難しい場合(消費者向けではない事業、海外事業など)でも、ホームページから、どのような顧客に向けた商品・サービスかの情報を得ることで決算データの意味が理解しやすくなります。

 決算書の意味を理解するための材料は、決してホームページのIRコーナーだけではありません。商品・サービスの紹介コーナー、さらには皆さん自身の身の回りにも決算書の数字の意味を解釈する情報がたくさんあるはずです。

 これらを通して、読者の皆さん自身が勤めている会社、ライバル会社、また投資先や取引先として気になる会社の決算書に目を通してみることをおすすめします。きっと何か新しい発見があるはずです。

 

『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』のポイント
 『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』では、有名企業12社を取り上げています。
・各社のホームページIRコーナーを個別に見に行かなくても、そのエッセンスを、証券アナリストの資格をもつ経営コンサルタントの著者がわかりやすく解説しています。
・アマゾン(Eコマースよりクラウドサービスで利益)、イオン(小売より金融)、サッポロ(ビールより不動産)などを例に、各社の意外な事業が利益の稼ぎ頭になっていることを「セグメント情報」から解き明かします。さらに、財務3表を一覧にして、相互の変化の関係を表の吹き出しや本文の解説で初心者でもわかるように示しました。
・各章の間に「用語解説」を入れることで、誰でも理解しやすい構成になっています。

 

長谷川正人(はせがわ・まさと)
大手コンサルティング会社上席コンサルタント。日本証券アナリスト協会検定会員。滋賀大学大学院経済学研究科客員教授。日経CNBC「けいざい豆知識!『イチマメ』」にて会計・財務分野の解説者(2014年~2016年)。
1958年東京生まれ。1981年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業し、同年、大手コンサルティング会社に入社。これまで市場調査業務、証券アナリスト業務、経営コンサルティング業務、財務研修講師業務等に従事。会計・財務に関わる研修・講演を勤務先の若手コンサルタント、大手企業ビジネスマン、大学院生など多数に展開するほか、テレビ番組で解説者もつとめる。
単著に『ヤバい決算書』(日本経済新聞出版社)、『「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい』(KADOKAWA)、『なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?』(東洋経済新報社)。共著に『経営用語の基礎知識』(ダイヤモンド社)、『未来萌芽』『新世代企業』『閉塞突破の経営戦略』(以上、野村総合研究所)。
趣味はビール缶コレクション。