企業の変身、有事・・・・・・なぜ「決算書」が注目されるのか

長谷川正人の「決算書のススメ」<第2回>

大手コンサルティング会社 上席コンサルタント 長谷川正人

 変化の多い時代には、変わり続ける企業の状態を把握するために、決算書を読み解くスキルが重要になっています。『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』の著者、長谷川正人氏に、決算書を読むためのコツを3回に分けて解説いただきます。
 第1回『「決算書」を見れば企業の健康状態がわかる!』につづく第2回では、いま「決算書」に注目が集まる理由を説明します。

決算書に慣れる早道

 決算書を理解するスキルを磨くには、教科書的な会計の基本知識を学ぶことも必要ですが、自分がよく知る企業の決算書を実際にたくさん読んでみることが必要です。数字の大小・高低・変化の意味を、その会社が展開しているビジネス(うまくいったり、いかなかったり)と関連づけて理解することが早道です。

 たとえば任天堂「スイッチ」のように大ヒット商品が出たり、ソフトバンクのように大規模なM&A(合併・買収)を繰り返したりしたら、損益計算書では売上(おそらく利益も)が増えるだろうと想像することは難しくないと思います。では、これによって貸借対照表(バランスシート)、キャッシュフロー計算書にどのような影響があるか?ということまで想像できる人はあまり多くないのではないでしょうか。

決算書への関心が高まる理由

 書店には決算書の読み方に関する本が多く出ていますが、ここ数年、多くのビジネス誌が会計・決算書スキルの特集を何度も組むようになっています。このことはビジネスパーソンの決算書・会計を学びたいニーズの高まりを反映しています。

 背景には、近年の企業をめぐる大きな2つの変化があります。

①社名では分からない会社の稼ぎ頭
 まずは、ソフトバンクに示されるように、国内外での大規模なM&A(合併・買収)を行う企業、またアマゾンや楽天などのように一般的イメージ(Eコマース事業)とは異なる事業で最大の利益を稼ぐ企業の増加により、かつてのように社名を聞けば「この会社は○○業の会社」という理解ではとらえられない企業が増えてきたことです。

 社名から受ける企業イメージと実際に利益を稼ぐ事業のギャップをつきとめて企業の「正体」を明らかにするには、「セグメント情報」に着目することが必要です。セグメント情報とは、連結決算の数値をA事業、B事業・・・にブレークダウンして損益などを示したものです。たとえばソフトバンクは「国内通信(ソフトバンク、Y!モバイル)」「ヤフー」「スプリント(米国携帯会社)」などといった6つの事業セグメントに分けています。セグメント情報では事業別に加え、所在地別(日本、米州、欧州、アジアなどの区分)の損益も示されるのが一般的です。

ソフトバンクグループのグループ構造とセグメント対応

※注 中国のアリババ集団は29.5%出資する持分法適用会社であって子会社ではない

②企業の「有事」の増加
 次に、東芝、シャープ、三菱自動車などに示されるように粉飾、身売り、破綻、不祥事、巨額買収など「有事」に直面する企業が増えてきたということが挙げられます。

 これらの「有事」企業は短期間に決算書の数字が激変するので、企業経営に何が起きたら決算書のどこにどのように数字が反映されるか、を理解するには格好の題材です。

 

『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』のポイント
決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』では、
・「社名では分からない会社の稼ぎ頭」を解き明かすために、「セグメント情報」に着目し、アマゾン(Eコマースよりクラウドサービス)、イオン(小売より金融)、サッポロ(ビールより不動産)など「意外な事業が利益の稼ぎ頭になっている」企業の事例を多く紹介しています。
・「企業の「有事」の増加」の代表例として、海外巨額買収を続けて行うソフトバンクは「日本の第3の携帯会社」という理解ではとらえられなくなっていることを説明しています。

 

長谷川正人(はせがわ・まさと)
大手コンサルティング会社上席コンサルタント。日本証券アナリスト協会検定会員。滋賀大学大学院経済学研究科客員教授。日経CNBC「けいざい豆知識!『イチマメ』」にて会計・財務分野の解説者(2014年~2016年)。
1958年東京生まれ。1981年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業し、同年、大手コンサルティング会社に入社。これまで市場調査業務、証券アナリスト業務、経営コンサルティング業務、財務研修講師業務等に従事。会計・財務に関わる研修・講演を勤務先の若手コンサルタント、大手企業ビジネスマン、大学院生など多数に展開するほか、テレビ番組で解説者もつとめる。
単著に『ヤバい決算書』(日本経済新聞出版社)、『「強い会社」はセグメント情報で見抜きなさい』(KADOKAWA)、『なぜアップルの時価総額はソニーの8倍になったのか?』(東洋経済新報社)。共著に『経営用語の基礎知識』(ダイヤモンド社)、『未来萌芽』『新世代企業』『閉塞突破の経営戦略』(以上、野村総合研究所)。
趣味はビール缶コレクション。