「つみたてNISA」活用のメリット、注意点は?

税金ゼロで資産形成が変わる!<第1回>

田村正之(日本経済新聞社紙面解説委員兼編集委員)、井戸美枝(社会保険労務士・CFP®)、大江英樹(経済コラムニスト)

 2018年から一層充実した税制優遇制度。長期の積立投資に適した「つみたてNISA」が始まり、個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」ではボーナス時の一括拠出が可能になりました。つみたてNISAやiDeCoを活用するのに気をつけるべき点は何か? 日経ムック『つみたてNISA&iDeCoでお得に資産運用』の巻頭企画「税金ゼロで資産形成が変わる!」を2回に分けて公開します。
 第1回では、「つみたてNISA」について専門家が本音で語ります。

世界株投信が有力

——「つみたてNISA」が始まります。この制度のメリットを聞かせてください。

田村:いままで投資に踏み切れない人は、いつ、何に投資したらよいかが分からなかったのだと思います。その点、「つみたてNISA」は一発勝負ではなく、月々の積立投資が240発勝負の1回に過ぎません。しかも投資できる商品は、コストが低くて、デリバティブなどのややこしい仕組みを排除した投資信託に絞られているため、選択に悩むことも少なくなります。長期が前提なので、株式中心の投資ができます。

大江:最大のメリットは非課税期間が20年と長く、運用成果が平準化できることです。これまでの一般NISAと比べて年間の上限積立額は40万円と少なくなりますが、トータルで見ればNISAを上回ります。

井戸:シンプルで誰でも取り組める制度だと思います。積み立ては、毎月に限らず、販売会社によっては毎週や毎日、年2回など自分のスタイルに合わせることもできます。

——「つみたてNISA 」では、117本の投資信託(2017年11月時点)が投資対象です。どのような商品がいいですか。

田村:僕は全世界の株式を対象としたインデックス(指数連動)型投信です。過去のデータを見ても、20年間の投資期間なら、いつ投資を始めても損することがほぼありません【図A】

【図A】 各時点(横軸)まで先進国株価指数に連動する投信を保有し続けたら何倍になったか

大江:同感です。グローバルに投資する株式100%の投資信託がいいと思います。基本的に投資信託を利用する意味はたった1つしかないと思っています。それは、自分でできないことができること。私にとってできないことは、全世界の株式に投資することです。

井戸:私も基本的には同じです。ただ、ご相談していると、全部株式は嫌だという方もいらっしゃいます。その場合は、債券を交えたバランス型になりますね。

田村:「つみたてNISA」でも、運用会社の考え方で投資銘柄を選別するアクティブ型投信が一部ありますが、どういう考えでファンドを選ぶべきでしょうか。

大江:過去、どんなに上手に運用できたとしても先のことは分からないので、結局は自分がその商品を信じられるかどうかだけです。

井戸:アクティブ型ではよく、ファンドの理念が強調されますが、そんなに大事かなと疑問に思うことがあります。評価するのは運用実績と運用管理費用、資産の安定的な増え方だけだと思っています。

値下がりした時が試練

——積立投資を続ける上で、肝に銘じておきたい心掛けはありますか。

大江:あまり短期的な値上がりを期待するのはやめたほうがいいです。実は、積立投資では、スタートしてからどんどん上がるのはよくなく、むしろどんどん下がっていくのが理想的です。気分は悪いですけど。株は永遠に上がり続けることも永遠に下がり続けることもなく、5年10年の間ではどこかで天井や底がある。逆説的には、これから下がりそうなものに積み立てるのがいいのですが、いまがバブルかどうかは誰にもわかりません。

田村:アメリカの景気拡大は戦後の平均で5年弱ですが、2017年で9年目です。足元は堅調ですが、数年の間に景気後退やクラッシュがあるかもしれないと思っていたほうがいいです。積立投資では、高値で買って下落するといままでの口数分もまとめて下がるので、マイナスの評価になることがあるかもしれません。それが試練の時です。下がった時こそたくさんの量を買うチャンスなので、とにかく続けると覚えておくべきでしょう。

井戸:あまり気に留めずに、値下がりしたらたくさん仕入れられたと思うこと。それでも焦って売ってしまう人もいるかもしれませんね。

大江:2001年にスタートした企業型の確定拠出年金は加入者が600万人います。こんなに相場がよいので、マイナスになっている人なんていないと思われがちですが、結構いるんです。それは、株式インデックス型の投資信託を積み立てていたものの、リーマン・ショックでびっくりして全部売ってしまい、定期預金に入れ替えた人です。損失が確定したままで回復のチャンスがありません。

田村:リーマン・ショックで長期投資のバスから降りちゃった人が損をしているわけですね。

井戸:投資信託の平均損益より、それを保有している人の平均損益のほうが低いというのは、安値で売ってしまう人が多いということなんでしょうね【図B】

【図B】 投信保有者の平均損益(インベスターリターン、年率、%)は投信の成績(トータルリターン)を大きく下回る

モーニングスターのデータから集計。2017年3月までの10年間

——「つみたてNISA」は一般NISAと併用できず、いずれかを選ぶのがルールです。

大江:これまでNISAをやっている人が、あわてて「つみたてNISA」に変える必要はないと思います。つみたてNISAの年間の投資上限40万円は、一般NISAの3分の1に過ぎません。同じ積立投資をするにせよ原資が違えば効果も違うため、投資資金にゆとりがある人ならば、一般NISAは悪くありません。ただ、5年という非課税期間は課題です。損失を繰り越すことができないため、自分が十分な利益が出たと思ったら、売却することです。

田村:一般NISAは、スポットでもうけることにも使えますし、つみたてNISAは長期投資に向いているので、そもそも用途が違うような気がします。世界株への分散投資でも、5年間の投資期間では、4分の1くらいはマイナスになっています。非課税期間を20年にしたことで、積立投資の敷居を下げたわけです。

井戸:制度上は毎年、いずれかを選び変えることはできますが、管理が難しくなりそうです。投資できる上限額が違うので、NISA口座から繰り越す先がつみたてNISAの口座にできないのも課題です。NISAは毎年、変更点があったので、正確に理解するのは一苦労ですね。

 

 

田村正之(たむら・まさゆき)
日本経済新聞社紙面解説委員兼編集委員。証券アナリストやCFP®の資格も持つ。著書に『はじめての確定拠出年金』(日経文庫)など。
井戸美枝(いど・みえ)
社会保険労務士、CFP®。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演を通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。
大江英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト。大手証券会社で個人の投資相談業務を25年、確定拠出年金の投資教育業務等に10年従事した後、オフィスリベルタスを設立。投資家心理に詳しく、実体験に基づいた著作やセミナーは人気が高い。

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