あなたの会社ではセクハラ防止対策を見直していますか?

第2回 セクハラ問題は事後対応しだいで、会社の明暗が分かれる。

山田・尾崎法律事務所 弁護士 山田秀雄、弁護士 菅谷貴子 (構成 和栗牧子)

DVD『セクシュアル・ハラスメント対策シリーズ』全3巻より

 リスクマネジメントの観点から企業の指導にあたっている山田・尾崎法律事務所の山田秀雄弁護士と菅谷貴子弁護士に、世間を賑わした財務省元事務次官のセクハラ疑惑を例に、セクハラ問題が起きたときの事後対応の重要さと、セクハラ防止対策についてお話をうかがった。

財務省の事後対応について

山田秀雄弁護士

山田秀雄弁護士
「事実関係を究明するために調査することは、絶対に必要だと思います。ただし、財務省の顧問弁護士事務所に真相を究明させるということは、いくら弁護士が公平公正な立場に立っていても、外側から見たら財務省の立場に立っているように見られると考えなかったことが、今回の事後対応の悪さにつながったのではないでしょうか」

 

 事後対応の悪さがもたらす、会社への損失

山田秀雄弁護士
「2000年前後に、日本を代表する大企業2社が起こしたセクハラ事件のときもそうですが、世の中で話題になってしまったセクハラ事件は事後対応で大きな失敗をしているケースがほとんどです」

菅谷貴子弁護士

菅谷貴子弁護士
「ハラスメント問題において、会社が守りたいことと被害者が訴えたいことにズレが生じることはよくあります。セクハラ問題では、そのようなときに歪みを生むような処理をしていると、大きなトラブルに発展していきます。

 例えば、派遣社員の人が派遣先でセクハラを受け、そのことを派遣元の会社に相談したときに、派遣元が派遣先に気を使って部署異動や違う派遣先の紹介だけで終わらせようとした場合などが典型的なケースです。このようなケースでは、被害者である派遣社員が、派遣元、派遣先会社共に信用できず、労働局や法律事務所など、外部機関に相談をして、トラブルがより拡大することがあります」

会社がセクハラ防止対策で気をつけること

山田秀雄弁護士
「今こそ、真剣に、リスクマネジメントの観点からセクハラ研修をすることが必要だと思います。例えば、DVDを使ったり、専門家を講師に呼んだりして研修を実施するなど、会社がセクハラ防止につながる行動をとることで、事前予防につながるとともに、いざ問題がおきたときに会社としても、事前にやるべきことを行っていたものとして受け止められる可能性が高くなります。もっともセクハラ対策においては、何より、一つでも案件が生じないことが重要であり、日頃から、実際にセクハラ問題が起きないようにセクハラの芽を摘むことが何よりも大事です」

「かつて、私がさまざまな会社でセクハラ研修をしていたとき、特に熱心だったのは外資系企業でした。外資ではCEOをはじめ、全社員がセクハラ研修を真剣に受けていました。また、内容を理解すると、『私はこの内容に沿って行動しています』と署名捺印したものを会社にフィードバックしてもらっていました。

 逆に日本の会社や大学で研修したとき、上層部の人はほとんど参加しませんでした。『本来、一番研修を受けてもらいたいのは、責任ある立場にあるあなたたちですよ』と思うのですが、本人たちには自覚がないのです。セクハラにしてもパワハラにしても、問題を起こしやすいのは一定以上の役職の人なのですが。今後、“財務省の振り見て我が振り直せ”で、日本の会社や組織の上層部の人もセクハラ問題について真剣に向き合うようになってほしいと思います」

DVD『判例・事例から学ぶセクハラ・グレーゾーン』全1巻より

セクハラ防止研修で大切なこと

菅谷貴子弁護士
「男女雇用機会均等法の改正により、『会社がセクハラ問題について定期的に啓発活動を行っている』ということは、セクハラが発生することを未然に防ぐためにも、また、実際に企業でセクハラ問題が起きたときに、企業を守るためにも重要な意味を持ちます。財務省の件もそうですが、セクハラは事後対応に失敗すると致命的なダメージを受けるので、企業は日頃から事後対策を含めたきちんとしたコンプライアンス体制を構築することが、危機管理として非常に大切になります」

管理職向けセクハラ研修で何を伝えるのか

菅谷貴子弁護士
「私はセクハラ研修中、失敗例をたくさん聞いていただくようにしています。『これだけの立場の人が一夜にしてこうなるのですよ』と。もちろん、セクハラすることを前提でお話しするのではなく、『自分がセクハラをしなくてもトラブルに巻き込まれる可能性はあるので、会社で役職についている方はハラスメントを防止するためのスキルを持たなければならない』というお話をします。

 一生懸命仕事をしてきた人でも、セクハラ問題について『踏み間違えると社会人としての人生が終ってしまう可能性があります』ということを役職者にどこまで理解してもらうかが重要です。そして、そのような意識を持ってもらうことで、結果的にセクハラ問題を起こさないようにしてもらうことが大事です」

 

プロフィール
山田秀雄(弁護士)
慶應義塾大学法学部卒業、弁護士。
第二東京弁護士会副会長、「両性の平等に関する委員会」委員長などを歴任。
リスクマネジメントの観点から、セクシュアル・ハラスメントに関する著作や企業の指導では特に定評がある。

菅谷貴子 (弁護士)
慶應義塾大学法学部卒業。山田・尾﨑法律事務所所属。企業法務〔コンプライアンス・労働法(セクハラ等)・著作権等〕及び、一般民事(不動産関係・相続・離婚等)を中心に弁護活動、講演活動、著作活動を行う。