相次ぐ「炎上」会見、その問題点はどこに?

究極のポイントは伝える決意・中身・技術

弁護士 中島茂

 企業、官庁、大学などさまざまな組織で、不祥事の謝罪会見が相次いでいます。謝罪会見は、内容やメディアへの対応の仕方次第では、いっそう世間から批判され、火に油を注ぐことにもなりかねません。

 ここでは『社長! その会見、会社を潰します』の著者である中島茂弁護士に、謝罪会見の核心となるポイントについて寄稿していただきました。

「非常時」の対応に、社会はその組織の本性を見る

 企業・組織で不祥事が勃発したときの「謝罪会見」のポイントを究極にまで突き詰めると、伝える決意と中身と技術の3点に集約される。

 まずは、謝罪の気持ちを世間に「伝える決意」を迅速に固めることだ。「決意」というと大げさなようだが、会見実行に向けて覚悟を決めるのは実は非常に難しい。だれだって厳しい状況からは逃げ出したいし、自社の不祥事については触れたくない。まして、カメラの放列のなかで会見するなどは絶対にしたくないと思う。だが、ぐずぐずしている間に、刻々と、しかも確実に、企業の社会的評判は下がっていく。

 「会見しないのはよほど隠したい事情があるのだろう」

 憶測は憶測を呼び、悪いイメージがどんどん膨らむ。2018年5月6日に発生した大学アメリカンフットボール試合の「危険タックル」問題では、監督が取材に応じたのは5月19日になってからである。マスコミは「試合から2週間」「ようやく」といった見出しで遅すぎる対応を非難した。対応しないでいた間に社会的評価はほとんど固まってしまった。

 謝罪会見で「伝える中身」は、「コンプライアンス」「社会貢献(CSR)」に向けた企業や組織の姿勢である。会見で何を伝えるのか、要点をしぼることが必要だ。「製品事故」であれば、企業は、消費者を危険にさらしたことに対する謝罪の気持ちと痛恨の思いを誠実に示すことで、「消費者の安全第一」の企業姿勢が偽りではないことを社会に示すべきだ。「学内事故」であれば、大学は、事故に巻き込まれた学生に対する謝罪の気持ちを示すことで、「学生の安心と成長」に向けた姿勢を社会に示すべきである。非常事態が勃発した状況だからこそ、日常掲げている「経営理念」に根差した対応を現実に行うべきであり、その対応状況を社会に示すことが必要なのである。非常時のときこそ人も企業も組織もその本性を現す。社会はそのことをよく知っている。

過去の実例から何を学ぶのか

 「伝える決意」と「伝える中身」が大切なのだが、それだけでは足りない。マスコミにきちんと気持ちが伝わり、結果として実際に社会に伝わるためには、それなりの「伝える技術」が必要である。ポイントをいくつか挙げておこう。

 ①極力、早い段階で会見を行うこと
 ②ステートメント、ポジションペーパー、Q&A、参考資料を用意すること
 ③トップが出席すること
 ④率直な謝罪の言葉を述べること
 ⑤服装も謝罪の気持ちを表すのにふさわしいものとすること
 ⑥会見の場で不用意に笑わないこと
 ⑦会場設営も謝罪の場としてふさわしいものとすること
 ⑧会見の時間設定、進行についても工夫をこらすこと

などである。こうした技術的な課題があることを認識しておかなくてはならない。

 これら謝罪会見の「伝える決意」「伝える中身」「伝える技術」の各局面で、実際にはどのような対応がマスコミ・社会にプラス評価されるのかは、過去の多くの実例を分析して検討するのが唯一の道である。自社・組織で実際に非常事態が生じたときに「実験」するわけにはいかない。

 私はこれまで謝罪会見について、『その「記者会見」間違ってます!』『社長! その会見、会社を潰します』という2冊の本を書いた(いずれも日本経済新聞出版社)。どちらも実例分析に基づいて対応のあり方を見出すアプローチをとっている。前者は「伝える技術」に、後者は「伝える中身」(経営理念)に重きを置いて分析を行った。2冊を合わせてお読みいただけると、謝罪会見の全容が浮かび上がってくると思う。

 

中島茂(なまじま・しげる) 
中島経営法律事務所代表。弁護士。
1977年東京大学法学部卒。1979年弁護士登録。2007年日本経団連「行動憲章実行の手引き」改定に関与。財務会計基準機構評議員会評議員。
著書に『社長! それは「法律」問題です』『その「記者会見」間違ってます!』『取締役の法律知識』『株主総会の進め方』『社長! その会見、会社を潰します』『意思決定のジレンマ(監訳)』(いずれも日本経済新聞出版社)、『取締役物語――花と嵐の一年』(中央経済社)、『最強のリスク管理』(きんざい)ほか多数。

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