第8回 柳宗理の鍋

大宮エリーのなんでコレ買ったぁ!? リターンズ

大宮エリー

鍋やフライパンは、とあるメーカーで揃えていた。一度買ったらずっと使い続けるほうなのであるが、やけどしたのである。というのもそのメーカーの鍋は、取っ手のところが鍋と同じステンレスで、熱くなってしまうのだ。だから、金属の取っ手にプラスティックの取っ手をつけて使うタイプなのだ。でも、それもそれらの鍋を同時にいくつも火にかけて、ちゃっちゃと料理をしていると、プラスティックの取っ手をいちいちつけたりはしない。鍋つかみでさっと鍋をあげたり、もしくは台ふきんで持ったりする。

そう、それなのに、注意をしていたのに、鍋を持つ手の甲がとなりの鍋にふれてしまった。「あ!あづ!」 となりの鍋は火にかけていなかったが、熱が伝わって、ぎんぎんに熱くなっていたから、さあ大変。冷水にいそいで手の甲を当てる。ことなきを得た。

その数日後、疲れていたのか、火にかけている鍋を、指で持ち上げてしまったのだ。しかもそのステンレスの鍋が重くて、手を離せなかった。だから重症に。指はみるみるうちにふくれあがり見たこともない状態に。氷で冷やしても冷やしても熱が取れず、皮膚が硬くなってしまった。水膨れというよりも、皮膚が死んだという感じ。保冷剤を凍らせたものを指に巻いて寝るも、翌朝もじんじん。会社で、打ち合わせ。指は氷水に。「や、やけどですか?」「はい、、かなりじゅってやってしまって」 真剣な打ち合わせなのに指を氷水にいれながらってすごくかっこ悪い。

お客様が帰られたあとスタッフが言った。「鍋、買いかえたらどうですか」
「確かに」 もう2度とないとはいいきれない。

柳宗理は使いやすさと美しいデザインが大好きで、スプーンなどはそれだった。昔スープストックトーキョーでスープを食べた時のスプーンの食べやすさとフォルムに一目惚れして調べて存在を知った、柳宗理。鍋はあるのかな? ネットで見たら、取っ手が優しさのプラスティックになっていた。これで、素手でがしがしつかめる!ということで、フラインパンから鍋から、パスタ鍋まで3つ買った。

やっぱね、デザインだけじゃだめだね! 年取ってきたら、安全が一番! 老化を感じて購入した柳宗理だった。

 

撮影:諸井純二

大宮エリー おおみや えりー/Ellie Omiya
作家、演出家、画家、ラジオパーソナリティー、脚本家、CMディレクターなどボーダレスに活動。

主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(毎日新聞出版)、コンプレックスが解消する短編集『猫のマルモ』(小学館)、『思いを伝えるということ』(文春文庫)、心の洗濯ができる写真集『見えないものが教えてくれたこと』(毎日新聞出版)など。そして最新刊『なんでこうなるのッ?!』(毎日新聞出版)が好評発売中。
現在、「サンデー毎日」「朝日中高生新聞」「シティリビング」にて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。
近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。
2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。

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