東京オリンピック後の失速は不可避

2025年までの日本経済を読む——第3の超景気を見誤るな

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所長 嶋中雄二

 2020年のオリンピック・パラリンピック終了後に日本経済はどうなるのか、誰もが興味を持つテーマではあるが、きちんとしたデータと経済理論に裏付けされた景気予測本は少ない。5月10日付日本経済新聞夕刊紙面「目利きが選ぶ3冊」で5ツ星の評価を得て、大きい反響を呼んだ書籍『第3の超景気――ゴールデン・サイクルで読み解く2025年』の著者・嶋中雄二氏にお話をうかがった。

2025年はどんな年?

 「来年の経済見通しは?」「2020年のオリンピックが終わっても今の景気は続くのか?」。——株式投資をされている方、年金生活を送られている方、その頃就職する子どもや孫がいる方、あらゆる人にとって経済動向は重大関心事です。足下の状況から10年先の動向まで、経済の先読みに頼りになるのが、景気循環という考え方です。

 私は経済の先読みが仕事のエコノミストです。オリンピック後の2025年まで視野に入れて講演する機会が多い今日この頃です。そこで、2025年が具体的にどのような年になるのかを見てみましょう。

 2025年には、戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代の人々が全員75歳以上の後期高齢者になり、超高齢社会を迎えます。また、1970年以来55年ぶりに大阪で国際博覧会(万博)が開催される可能性もあります。2020年の東京オリンピックとセットで、大阪万博も呼び込むことができれば、日本経済が戦後の高度成長期にあった1964年に東京オリンピック、70年に大阪万博が開催されて以来、それぞれ56年、55年ぶりの再開催になるのです。

経済の大きな波は規則的に訪れる

 次に、私の先読みの武器である景気循環の考え方について説明しましょう。ケインズと並ぶ20世紀の大経済学者であるシュンペーターは、キッチン・サイクル(短期循環)、ジュグラー・サイクル(中期循環)、コンドラチェフ・サイクル(超長期循環)の3つの景気循環がすべて下降で重なると、1930年代の大恐慌のような「大きな谷」が到来し、また3つの循環がすべて上昇する場合には、「大きな山」が生じると説きました。

 私は、これらにクズネッツ・サイクル(長期循環)を加えた4つの景気循環が揃って上昇する局面を「ゴールデン・サイクル」、短期か中期かどちらかが上昇せず3つの循環が上昇する局面を「シルバー・サイクル」、そして、長期と超長期のより根底的な2つの循環が上昇する局面を「ブロンズ・サイクル」と名づけました。

「名目設備投資/GDP比率の複合循環~ブロンズ・サイクル~」

 特に3番目の「ブロンズ・サイクル」は、短期、中期の通常の好景気を超越した1つの「上り坂の良い時代」という意味で、「超景気(Super Business Cycle)」と命名しました。

 1885年以降における日本の短期・中期・長期・超長期の景気循環の平均周期を見ると、各々4.9年、9.6年、25.6年、そして、丁度オリンピックと万博の再開催までの間隔とほぼ等しい56.0年となっています。この見事な規則性こそが、景気循環を先読みの有効な武器としているのです。

景気循環論による2025年までの経済シナリオ

 では、景気循環論で2025年まではどのように読み解けるのでしょうか。私のシナリオを述べますと、ゴールデン・サイクルは2018年まででいったん終わるものの、短期の景気は、消費税率引き上げ前の駆け込みや目白押しのイベントによって2019年9月まで拡張が続き、戦後最長の82ヵ月を記録してピークアウトします。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックで景気の水準は維持されますが、2021年付近は1964~65年の「昭和40年不況」の再来になるとみられます。我慢の年です。しかし、その後再び日本経済は立ち上がります。2020年の東京オリンピックが終わっても、まだまだ再開発は続きます。

 例えば高層ビルを見てみましょう。東京エリアでは、2022年に森ビルが、虎ノ門・麻布台地区に330メートルの超高層ビルを建てます。あべのハルカスを上回る日本一の高さを誇るビルになります。そして東京―名古屋間にリニア中央新幹線が開通する2027年、JR東京駅前には常盤橋街区再開発プロジェクトB棟と名づけられている390メートルの超高層ビルを、三菱地所が建設する予定になっています。

 これらの再開発に加え、2025年の大阪万博、2027年のリニア中央新幹線開通などへの期待感によって活気を取り戻し、2024年には2017~18年に次いで2000年代で2度目、通算7度目のゴールデン・サイクルを迎えます。

 東日本大震災後の2012年から2025年までの時代は、全体としては、明治の「坂の上の雲」の時代(1904~16年)と昭和の「ALWAYS 三丁目の夕日」の時代(1951~68年)に続いて、ブロンズ・サイクルが形成され、日本経済にとって3番目の歴史的勃興の時代ともいえる「第3の超景気」となる、と思われます。

 詳しくは、拙著『第3の超景気――ゴールデン・サイクルで読み解く2025年』をご覧下さい。

 

嶋中雄二(しまなか・ゆうじ)
三菱UFJ モルガン・スタンレー証券参与 景気循環研究所長、景気循環学会副会長。内閣府景気動向指数研究会委員。
1955年東京生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒。三和銀行入行。83年退職後、フランス政府給費交換留学生としてリヨン経営大学院留学、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員、86年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。日本経済研究センター研究員、三和総合研究所、UFJ 総合研究所、三菱UFJ リサーチ&コンサルティングの各投資調査部長兼主席研究員、三菱UFJ 証券参与景気循環研究所長を経て、2010年から現職。

主な著書に『これから日本は4つの景気循環がすべて重なる。』『ゴールデン・サイクル』『日本経済の油断』『メジャー・サイクル』『複合循環』(いずれも東洋経済新報社)、『太陽活動と景気』『先読み!景気循環入門』(いずれも日本経済新聞出版社)などがある。

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