「自分でやったほうが早い」は大間違い

『任せる技術』で部下を育てる

担当編集者お勧めの一冊   編集部 細谷和彦

 メールやSNSの普及により、コミュニケーションは文字によるものがいっそう増えています。最近、電話で会話をしていない、という人も多いのではないでしょうか。

 ただ、会社などの組織にいると、対話しないわけにはいきません。しかし、コミュニケーションが苦手だ、という人も多いでしょう。対人関係の悩みは、永遠のテーマといえそうです。

 『任せる技術』は、2011年の発売から約5年間で19刷に到達。息長く売れる本となりました。組織には必ず、「お願いする人」と「お願いされる人」がいて、これがセットでうまく機能することで物事は進展していきます。けれども、組織にはいろんな人がいて、しかもタスクは複雑に絡み合っています。お願いすることが苦痛になり、「自分でやったほうが速い」と思う人もいるでしょう。

 しかし、「お願いする人」は概して、組織のマネジメントを担当することも多く、会社の未来を考えるなどの別のタスクがあります。「他人にしてもらうべき仕事」をいつまでも自分でこなしていては、大事な仕事への時間を失うばかりです。でも、「お願いされる人」が失敗したら、自分が尻ぬぐいをしないといけないのか?——「任せる」ということには、いつも悩みがつきものです。

 この本が出るまで、権限移譲に関する本はあるにはあったものの、ここまで実践的に落とし込んだ本はほとんど存在していませんでした。そういった環境に加えて、著者の小倉広氏は本書の中で、積極的に自分の失敗談を披露。自分が鬱になった話まで持ち出し、読む人の共感を誘います。

 若くしてリーダーに任命された著者は、自分ができる営業マンだったからこそ、ベテランメンバーに「口出し」して、総スカンを食いました。あるいは、期待したメンバーに新しいことを任せすぎて、潰してしまいます(最終的にはそのメンバーは退職してしまう)。そういう苦い経験をたくさんしてきました。

 その試行錯誤の中で、導き出した手法は明快です。

「未体験ゾーンの仕事を任せてはいけない」
「作業ではなく、責任を任せる」
「ほったらかしと任せるは違う」等々。

 こういった言葉の一つ一つが、とても納得感の高いものになっています。

 また、本書には20以上のチェックシートがついており、読者からも好評です。直接書き込むことも可能となっています。「自分の体験を振り返ることができるシート」「どんな仕事(責任)を任せたいか確認するシート」「自分の優しさ、厳しさを確認するシート」など、さまざまな場面、用途に応じたシートが用意されています。実際に手を動かしながら、技術を習得することができます。

 こういった様々な工夫がされている本書ですが、著者の考えはきわめて明確です。

「とにかく、できなくてもムリして任せる」

 やってみないとどうしようもないということですね。

 「任せる勇気」を持つことができる1冊といえるでしょう。

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