ビッグデータの時代に必要な知識とは?

『はじめての統計学』 ロングセラーの秘密に迫る

編集部 平井修一

 スピードの時代。話題になっている書籍も、その多くが瞬く間に入れ替わってしまいます。そんな中、1994年に刊行されてから四半世紀近く経っても、多くの読者に読み継がれている隠れたベストセラーがあります。それが『はじめての統計学』。2018年現在で、版を重ねること、なんと47刷。ついに15万部を突破しました。なぜ、これほどまでに長く、深く読者に受け入れていただいたのか。その秘密に迫ります。

統計学はいまやビジネスの必須知識に

 英会話と並んで、時代を問わず入門書の鉄板テーマなのが統計学です。「わかりたい」「使いこなしたい」と切実に願う読者の方々に支持され、本書は刊行から24年で48刷15万部を突破し、今でも毎年増刷を続けています。

 経済学や社会学を本格的に学ぶためには統計学の知識が必須です。さらに、「ビッグデータの時代」といわれるようになり、さまざまなデータが容易に集められ、分析しなければならない機会が増えています。しかし、理系の大学、学部にでも進まない限り、数学が大の苦手のまま、大学生、社会人になる人も少なくありません。

独習できるワークブック

 本書は、慶應義塾大学で塾長を務められた鳥居泰彦先生が、数学の試験を受けてこなかったり、数学の不得意な学生でも理解できるように解説した統計学の入門書です。ご自身が経済学部で長年、学生向けに教えてきた講義ノートがもとになっています。

 予備知識をほとんど必要とせず、身長や所得のデータなど簡単な設例をもとに統計の基礎を学んでいきます。自分で手を動かし、電卓を使って計算し理解するワークブック形式です。「わからない人」が読んでいることを前提に丁寧に解説し、同じような練習問題を繰り返していきます。授業の教科書としてだけでなく独習用としても読まれているそうです。

教育者としての、「著者の情熱」が伝わる本

 鳥居先生の教育者としての思いが、行間からにじみ出していることも本書の特徴です。

「大学卒とは名ばかりで、楽な科目を渡り歩き、覚えもしなければ理解もしていないのに、進級点を獲るテクニックだけを身につけた『要領人間』、『内容のない人間』が大量発生すれば、最後には日本は亡びる」

「学問はすべて『自分が努力して覚える・理解する・考える』という仕事の積み重ねですから、誰でも孤独なのです。(中略)諸君も、学問の孤独に耐えて下さい。むしろ学問の孤独を楽しんで、この科目をマスターしてくれることを祈ります」

 教育者としての著者の情熱、真摯な言葉が、読者を惹きつけ、学ぶ意欲を引き出す——」ロングセラーの秘密はそんなところにあるのかもしれません。

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