どこが危ない? 仮想通貨取引

(第1回)問題なのは仕組み? ルール? 取引所?

中央大学 総合政策学部 准教授 岡嶋裕史(おかじま・ゆうし)

 2018年1月末、Facebookが仮想通貨の広告を禁止しました。ソーシャルメディアに掲載される広告がなんらかの形で規制されたり禁止されたりというのは、あまり聞いたことがありません。仮想通貨って、そんなに危険なものなのでしょうか。

 この連載では、仮想通貨の仕組み、価値が保証される根拠、ごちゃまぜになっているリスクについて、情報セキュリティの観点から解説します。

町内会の福引券も仮想通貨?

 昨今いわれる「仮想通貨」は、「暗号通貨」とほぼ同じ意味で使われています。現金通貨に対する仮想通貨という意味では、Suicaやnanacoだって仮想通貨ですし、町内会の福引券だって仮想通貨かもしれません。でも、いま仮想通貨といわれて、福引券を想像する人はいないと思います。

 では、暗号通貨とはどのようなものでしょうか。暗号通貨が普及するきっかけになったのはビットコインの成功で、その後登場する多くの暗号通貨は多かれ少なかれビットコインを参考にしています。その特徴は、通貨の発行と取引をデータ化し、ブロックと呼ばれる単位に収めて、公開していることです。

 通貨として使われる以上、発行と取引は四六時中行われますから、ブロックはどんどんどんどん発生することになります。このとき、古いブロックに新しいブロックをくっつけて、数珠つなぎにします。これがブロックチェーンという仕組みです。ブロックチェーンはネットワークに参加するサーバにコピーされ、保存されます。

価値を保証しているのは誰?

 たとえば紙幣であれば、発行は各国の中央銀行が独占的に行います。町内会の福引券は、町内会が発行しているでしょう。暗号通貨の場合は、あっちでもこっちでも通貨が発行され、取引が行われることになります。そして取引の内容は、その暗号通貨のネットワークに参加している人は誰でも見ることが可能です。

 それで大丈夫なのでしょうか? 紙幣は中央銀行が価値を裏書きしてくれるから、高騰や暴落が起こりにくいのは理解できます。では、暗号通貨は? 多くの暗号通貨は通貨発行量に上限を定めることで、価値の暴落を防いでいます。レアメタルのように、有限の資源だから、底堅い価値があるというわけです。

危険がごちゃまぜになっている

 どこでも通貨の発行や取引が行われるとして、うその情報が混じったらどうなるのでしょう。暗号通貨ごとに細かいルールが定められていますが、ルールに従わず勝手に通貨を発行して、ブロックチェーンにその情報を追加したら、不正に暗号通貨がもらえてしまうのでしょうか。実はこの部分に暗号技術が使われています。正当な「鍵」を持っている人でなければ、暗号通貨を操作できません。仮にうその(自分に有利な通貨発行や取引を記録した)ブロックをブロックチェーンにくっつけて通貨を盗もうとしても、ブロックチェーンは世界中のサーバにコピーがたくさんありますから、衆目にさらされることで辻褄のあわなさが一目瞭然になります。

 もちろん、危険はあるのです。ただ、現状では、暗号通貨の仕組みそのものの危険さ、「鍵」の管理にともなう危険さ、一般の人が暗号通貨を利用する仲立ちをしてくれる取引所などの運営にともなう危険さ、こういったものがごっちゃになって議論されている感があります。仮想通貨取引の危険さを評価したり対策を立てたりする上では、これらをきちんと整理したほうがよいでしょう。この連載で1つ1つ例を取り上げて、解説していきます。

 

執筆者プロフィール

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所、関東学院大学経済学部准教授、関東学院大学情報科学センター所長を経て、中央大学総合政策学部准教授(現職)。専門は情報ネットワーク、情報セキュリティ。

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