社員研修で人気のファシリテーション手法で 「人生100年時代の働き方」を考える

社員参加型の「働き方改革」推進にも

大川恒(株式会社HRT代表)

 私たちの平均寿命は年々伸び、将来、「人生100年時代」となることも夢ではない。しかしながら、少子高齢化に伴う労働力不足や社会保障費の財源枯渇の社会問題もあり、副業の推進や定年延長などの国策を含め、長く働き続けざるを得ない時代がやって来ている。

 そのような時代に、自分なりにどういった働き方を選べばよいのかを、「ワールド・カフェ」というファシリテーションの手法を使って話し合うイベントを開催した。

 場所は、テーマにふさわしく、ビジネスパーソンに人気の本屋さん、八重洲ブックセンター本店。参加者は25名。職業、年齢、そして働き方もそれぞれだが、参加者の多くに気付きを与える内容となったのでご紹介しよう。

 ワールド・カフェとは、メンバーの組み合わせを変えながら、4~5人単位の小グループで話し合いを続けることにより、あたかも参加者全員が話し合っているような効果の得られる会話の手法のことだ。(『ワールド・カフェをやろう 新版』(日本経済新聞出版社)。

 ワールド・カフェの詳細については、この1カ月ほど前に行ったイベントの記事「今話題のファシリテーション手法で『人生100年時代の生き方』を考える」に書いているので、そちらも併せてお読みいただけたらと思う。

 以下の写真のように「えんたくん」という丸い段ボールを膝の上に乗せ、さらに段ボールの上に置いた模造紙にフェルトペンで書きながら、以下の3つの問いで話し合いを行っていく(通常のテーブルでも実施可能)。

▼ワールドカフェの標準的な流れ▼

問1:今、あなたの身の回りで どんな新しい働き方をしている人がいますか?それは、どんな働き方ですか?
問2:今後、どのような新しい働き方が生まれてくると思いますか?
問3:あなたは、どのような働き方をしていきたいですか?

 上記の問いで話し合いをしたあとで、各々のグループのメンバーを入れ替え、計3回(ラウンド)、話し合いを行った。このとき、一度いっしょになった人同士が、メンバー入れ替えの際、なるべくかぶらないようにすることがポイント。

 こうすることで、あたかも「参加者全員」で話し合ったかのような効果が得られるのだ。

 以下の写真のように、会話をしながら手を動かし、自由に考えが書き込まれていく。

 ワールド・カフェの最後の全参加者による振り返りでは、以下の写真のように、参加者全員がワールド・カフェで使用した模造紙を囲んで輪になり、発表を行う。

 「これからの働き方」についての話し合いの内容、気づきや発見を、時間の関係上、14名の方に発表してもらい、参加者全員でシェアを行った。

以下は、発表内容の一部だ。

◆「自分はこんな働き方がしたい」というコメントを聞くことができた。「1人ひとりが自分の求める働き方が実現されることが重要なのだ」ということに気づいた。

◆新しい働き方を受け入れられる人と、受け入れらいない人に分かれるだろう。私は、新しい働き方にチャレンジしながら、楽しんで生きていきたい。

◆1人ひとりが創出する価値を認めてくれるのは、今働いている会社だけではなくなってくる。年齢には関係なく、価値があることを創出できるかどうか、その価値が高いか低いか、が重要になる。購入してくれる人や組織がないと対価が得られないので、収入を得ることのできる労働にはならない。そうすると、価値を購入してくれるお客様がいるかどうかが、年齢に関係なく働けるかどうかのポイントになるのではないか。

◆出戻り自由な会社があることがわかり、働くときのそういう自由さはいいなと思った。

◆新しい働き方を考えることは、新しい休み方を考えることにつながる。休んでいるときに、好きなことで副業することもできる。

◆幸せの定義は各人異なる。だから、1人ひとりの幸せに基づいた働き方もさまざまな形になる。今自分が何をしたいかによって、働き方も異なってくる。だから、他の人の大切にしている生き方も認めて生きていきたい。

◆これからの働き方は、目的やモチベーションで異なってくる。働く目的やモチベーションは、人生のステージなどで異なる。これからの働き方は取捨選択できるので、変化する目的やモチベーションに応じて柔軟に選んでいけばいい。働く目的が大切になってくる。

 最後に、3ラウンドのワールド・カフェの話し合いで一番印象に残ったことを、1人ひとりがキーワードの形で述べる「チェックアウト」を行った。

以下は、そのキーワードの一部だ。

「自分で選べる」「多様性への対応」「新しい事へのチャレンジ」「人間にしかできない仕事をする」「自分にとっての意味」「休み方」「フリー」「選択の自由を楽しむ」「自分らしさ」「自分流に生きる」「働き方の多様化」「楽しく」「生き方」

 今回は、特別参加のファシリテーション・グラフィッカー、大嶋友秀さんが、各テーブルを回って話し合いのポイントをまとめ、ワールド・カフェ全体の様子を以下のように描いてくださった。

 以上が、イベントの内容だが、ワールド・カフェによる会話によって、1人ひとりの参加者の気づきが異なるのがわかる。多様な意見を引き出したり、異なる考えや気づきをつなげて、新しいアイデアを生みだしたりすることにワールド・カフェは役に立つのだ(しかしながら、早急に結論を出したいときの話し合いには、ワールド・カフェには向いていないともいえる)。

 最後に、今、多くの企業が取り組んでいる「働き方改革」へのワールド・カフェの活用について書いておこう。

次のページ:働き方改革推進にも有効なワールド・カフェ

関連著者・監修者

大川 恒(おおかわ こう)

組織変革コンサルタント。(株)HRT代表取締役。
ワールド・カフェ・コミュニティ・ジャパン(WCJ)代表。
日経ビジネススクール講師。『ワールド・カフェの事前準備とファシリテーション術』
1961年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。シカゴ大学経営大学院でMBAを取得。ホールシステムアプローチ(ワールド・カフェ、OST、AI、フューチャーサーチ)などのファシリテーターの養成講座を開催している。農商工連携、日本力発見、健康づくり、地域包括ケアなどをテーマに〈講演+ワールドカフェ〉を開催している。また、セミナー、ワークショップを組み込んだ以下のような共創型コンサルティングを展開している。
◇ダイアログ、ホールシステム・アプローチ(ワールド・カフェ、AI、OST、フューチャーサーチ)を使った組織開発コンサルティング
◇学習する組織構築のための組織変革コンサルティング
著書に『ホールシステム・アプローチ』『俊敏な組織をつくる10のステップ』などがある。

※本データは、小社での最新刊発行当時に掲載されていたものです。

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