スコアメイクの掟
「右か左か、 目標を明確にして打て!」
書斎のゴルフVOL.36
右か左か、打つ前に必ず、ボールを打つ方向を決める
──その通りでした。次のゴルフのときにも試してみたいと思います。さて、前置きが長くなってしまいました。久富さんには今回のテーマ、スコアメイクについて、いくつかのポイントを挙げていただけるように、あらかじめお願いしていました。
久富●まずは、ボールの打ち分けを挙げたいですね。左地帯と右地帯の打ち分けです。
──打つべき方向はフェアウェイのセンターではないということですね。
久富●その通りです。こういう格言があります。
「ハンディキャップの多いプレーヤーになると、狙うことは狙うが、それは一にも二にもフェアウェイの真ん中である。それも単に漠然と広いフェアウェイの端を避けるためだけの意味の中央であって、狙うという意識はきわめて少ないのが普通である」
つまり、どこに打つのか、打つ前に目標をはっきりと決めなさいということです。それはフェアウェイの真ん中ではないということで、フェアウェイの右か左かということなのです。
──いきなりハイレベルな話ではないですか……。
久富●いえいえ。大事なのは漠然と打たないということです。
「ビギナーの身になってみると、打つ前にどこかを狙ってみても、そこへ到底打つことができないのだから、やむなく漠然と打たざるを得ないと言うかもしれない」
というのが一般ゴルファーの気持ちかもしれませんが、
「どこか一定のところに打とうとしてこそ、球はそこへ飛んでくれるが、漠然と打った球は、方向をもたずに飛んで行く」
このように達人たちが言っているわけです。
──それはレベルに関係なく、ですか?
久富●もちろんです。まずはフェアウェイを半分にして、右か左かだけを目標にするのがいいでしょう。
──ピンポイントではなくて広い範囲でいいのですね。地帯というのはそういう意味なのですね。
久富●その通りです。ただ、心配なのは、そんな決め打ちができるなら、センターを目標にしてもいいのではという考えが出てきてしまうことです。
──あり得ますね。
久富●はっきり言って、それはダッファーの考えです。センターを狙ったとしましょう、当然、真っ直ぐなボールは出ないですから、どちらに行くかわからないということになってしまいます。
──避けたかったクロスバンカーや池、林に入るということにもなってしまいますね。
久富●ですから、避けたいハザードをしっかり認識して、それがないエリアを目標にしっかり定めて打つということです。右にクロスバンカーがあったり、林がせり出していれば、左を目標にするわけです。
──これまでも、それくらいのことはやっていたようにも思います。
久富●そうでしょうか? ハザードは避けたいという意識はあっても、フェアウェイのセンターを狙っていたと思いますよ。
──言われてみればそうですね。入らないでくれと願うだけで。
久富●それではいけないのです。はっきりと、右か左かを決めて打つことです。
──持ち球は関係がありますか?
久富●もちろんです。アマチュアはスライサーが多いと思いますので、右サイドに落ちやすい。ですから、右にハザードがあれば、もっと左を目標にするのは当然です。ただし、私が常々言っているように、フックとスライス、どちらも打てるように練習して欲しいのです。
──フックとスライスのどちらも打てるようにするのはアマチュアには難しいと思いましたが、久富さんがこれまで教えてくださった、フックは右を向いてフェースを閉じて打ち、スライスは左を向いてフェースを開けば簡単に打てますね。
久富●その通りです。狙ったところに正確に落とすことは難しいことですが、その方法でフックとスライスのスピンをかけられるので、逆方向には飛ばない。つまり、危険地帯をしっかり避けることができるようになるということです。
──右か左か、打つ前に立てた目標エリアに、安全に打てるというわけですね。
久富●その通りです。
──それとともに、ティショットで打つ目標エリアは、次打でグリーンを狙えるところのほうがいいわけですよね。例えば、右地帯からだと、ガードバンカー越えになってしまうのなら左地帯を目標にするとか。
久富●それはレベルに関係してきます。2オンなのか、3オンなのか、あるいは4オンなのかです。90や100を切るのが目標ならグリーン方向は関係ありません。
──ティショットは次打を考えずに、右か左か、より安全な方向に目標を決めれば良いということですね。
久富●次打でグリーンの位置を気にするのは72を求めている人です。
──今日のラウンドのようにボギーオンでいいと考えると必要ないことになりますね。
久富●8番ホールがいい例で、ボギーオンならば、セカンドショットをどこに刻むかが重要になります。
──憶えています。パー4でしたが、ラフからのセカンドで、残りが170ヤードくらいあって、ピンがバンカー越えになっていたときです。私が残り60ヤードのフェアウェイ、久富さんが左サイドのグリーン手前にセカンドを刻みました。
久富●私は、グリーンに対してオープンな場所でした。アプローチに不安がない。
──でも、久富さんが刻んだその場所はピンから遠いエリアでした。
久富●ベン・ホーガンも言っていることですが、ピンから遠ざかったエリアに打つというのは実は怖いのです。ピンから遠くなるだけで、次で乗せられるだろうか、ボギーやダボ、いやトリプルになるかもと不安になるのです。ですが、ピンに近づいても次のショットがバンカー越えなどになればもっと怖い状況になる。だからこそ、ピンから遠ざかってもいいわけです。
──私は次打が打ちやすい距離だけを考えていて、そこまでは考えていなかったですね。刻む場合でも右か左かを考えないといけないのですね。
久富●そう、視野を広くすると言えばいいのでしょうか。ピンに集中するのではなく、どこを狙えば次がさらに打ちやすいか、周囲を観察することが大切です。
──90切りのレベルならパー4で2オンを狙う必要はないわけですからね。
久富●2オンを狙う場合、常にリスクが伴うということを知っておかなければなりません。グリーンを外した場合、アプローチが難しい場所になってしまうことが多いのです。
──ピン、グリーンを狙わずに、どこに刻んだら、3打目が寄せやすいかを考えるということですね。
久富●そうです。ピンにアプローチで寄せたい、それには10ヤードでもグリーンに近づけたい、その気持ちが大きなクラブを選ばせるわけです。そして力も入る。そうするとボールは散らばってしまう。その結果難しいアプローチが残るという、いわば負のスパイラルに陥ってしまうのです。「小さいクラブを持つと、次はやさしいアプローチ」。これは標語にしてもいいかもしれません。
──呪文ですね。セカンド、ああサードショットのときもありますね。その場所に行ったら何回か呪文を唱えることですね。
久富●でも、心の中だけにしてくださいね。
──ははっ、そうですね。ところで、話を戻してしまうようで恐縮ですが、ティショットで右と決めたとします。そうした場合、距離は関係ないと考えていいのでしょうか。
久富●そうです。100ヤードでもいいのです。120ヤードでも50を切るには充分ですし、90を切るには150ヤードでいい。
──今日のラウンドは3オンのボギーペース、つまり90切りのレベルでした。
久富●例えば、340ヤードのパー4なら、150ヤード、150ヤードで残りは50ヤード以内ですね。つまり、ティショットでドライバーは使わないという選択肢もあるのです。
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