様々な倒産劇から、何を学ぶのか

『あの会社はこうして潰れた』が読まれた理由

編集部(野崎剛)

 長い好景気もあり、企業の倒産件数は2010年以降、7年連続で減少しました。とはいえ、さまざまな企業の業績不振が、最近もメディアで数多く報じられます。会社が傾く際、その裏で何が起こっているのかは、多くの関心を呼ぶところです。「我が社は、取引先は、本当に大丈夫なのか?」。2017年春に刊行された『あの会社はこうして潰れた』がベストセラーになった背景には、私たちの不安心理もありそうです。

身近な事例が、多くの人の疑問に応える

 日経プレミアシリーズの『あの会社はこうして潰れた』は、2017年4月に初版9000部で刊行した当初より猛烈な勢いで増刷を重ね、2カ月も経たないうちに10万部を突破しました。

もともと日経電子版の人気連載企画をまとめた待望の書籍だったとはいえ、これだけ堅いテーマが、発売直後から大きな話題を呼ぶのは異例のことです。

会社が潰れるとき、何が起きるのか?

なぜ倒産を防げなかったのか、倒産を予知するには何が必要か――。

 本書は、この視点を掘り下げた内容となっており、金融機関に勤務される方はもとより、さまざまな業種、職種の方に手にとっていただくことができたのだと思います。

著者の藤森さんは25年間にわたり数千件の倒産現場を見てきた企業信用調査マン。本書は、その豊富な経験から、多くの倒産事例を集めてコラムとしてまとめたものです。新聞紙面を賑わすような、大手の金融機関や証券会社、ゼネコンといった大型事例ではなく、どこにでもある中小企業を中心に取り上げています。

そうした身近な事例を挙げていたからこそ、「自分の会社は大丈夫だろうか?」「取引先、就職先は安心できる会社なのだろうか?」という読者の疑問にこたえる形となり、発売直後から、都心、地方を問わず、全国で好調な売れ行きとなりました。

創業500年の老舗、アイドルが広告塔のアパレル……数々の倒産劇から何を学ぶか

 本書は、企業信用調査マンが書いたものなので、取材対象にインタビューを行って倒産の背景を深掘りする新聞記者とは違い、一歩引いたところから倒産を客観的に観察し、事例を類型化して整理しているのが特徴です。信用調査マンならではの、冷静な分析がなされているともいえます。

 ワインを対象に77億円を集めた人気投資ファンド、創業500年の老舗菓子店、名医が経営する病院、元AKBのメンバーが広告塔を務めたアパレル――。本書に登場する企業、業種はさまざまです。

 また、産業構造の変化、高齢化による人手不足や事業承継の問題。本業は順調なのに、多角的経営や金融取引にのめり込んで多額の損益を出したケース。赤字経営を隠蔽するために不正会計に走るケースなど、倒産の原因もさまざま。それらの事例をひとつひとつ読み解くと、今の日本経済が抱える問題が浮かび上がってきます。

 本書は、どうすれば企業は潰れるのか、なぜ防げなかったのか、起こりやすい傾向、陥りやすいポイントを抑えて解説しています。

 また、企業の倒産情報は、なんとなく外部に伝わるときもあれば、隠されていた都合の悪い情報がいきなり噴出するときもあります。倒産を予測するにはどうすればよいのかも学べるようになっています。

 リアルな企業ドキュメンタリーとして興味深いだけでなく、倒産の実際を学ぶ事例集としても有用な1冊であったため、多くの読者の関心を引くのだと思います。

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