未来はどうなる? 人工知能(AI)との正しい付き合い方

巷の過剰な期待やAI脅威論に惑わされずに、AIをどう使いこなしていくべきかを考える

編集部(構成:和栗牧子)

 SONYの犬型ロボット“aibo”にはじまり、2018年もまだまだAIブームはつづきそうだ。最近では、スマートフォンの音声機能など、身近で人工知能(AI)のお世話になることが多くなった。
 今後、“AI”がさらに進化していったとき、私たちの未来はどう変わるのか? AIとの付き合い方について、ロングセラーになっている『人工知能が変える仕事の未来』の著者・野村直之氏にうかがう!

巷で注目される人工知能

 戌年にちなんでか、SONYが10数年ぶりに犬型ロボット“aibo”を2018年1月11日に発売した。人工知能(AI)とクラウドを活用した新生aiboは、飼い主とのコミュニケーションを通して自律的に学習し、個性的なロボット犬に成長するそうだ。

 囲碁のトップ棋士に勝利した“AlfhaGO”につづき、家庭で愛されるロボット犬の誕生。近い将来“ドラえもん”のような意思をもったロボットも出現するのでは!? などと期待する人も案外多くいるのではないだろうか。
 今後、ますますAIへの期待は高まり、12年からつづく第3次AIブームはさらに加速しそうだ。

 その一方で、テレビや新聞、雑誌、インターネットなどのメディアでは「十数年後に、人間が人工知能に仕事を奪われる」と喧伝している。
 とはいえ、巷の過剰な期待やAI脅威論について、『人工知能が変える仕事の未来』の著者・野村直之氏は、まず「今世紀中にシンギュラリティが到来することはない」と現状を見据えた上で警鐘を鳴らしている。

AIとの正しい付き合い方とは?

 2010年代以降に誕生したディープラーニングによって、画像認識・音声認識の技術が加わることで、AIは急速に発展した。
 加えて、IoT(Internet of Things)の推進も影響してか、「スマートフォンの音声機能」「スマートスピーカー」「AI家電」などが誕生した。

 AIが社会に浸透しはじめた一方、AIに関する知識はまだ一般には普及していない。
 だからこそ、言葉だけがひとり歩きし、「AIを使えば何でもできる、大丈夫!」というAI万能論が過度な期待を生む。

 それは、ビジネスの現場でも同じことだ。

 野村氏は、30年以上にわたりAI、自然言語処理の最新研究開発に携わり、ビジネスの世界でも活躍している。長年の経験から野村氏は今後、仕事でAIを活用する上で大切なのは、次のことだという。

「AIができること、できないことをしっかりと見極めて、適切に活用することです。今後、重要なのは知識労働から『知能労働』へシフトするときに、AIの知識を身につけた人材を育てることです。『知能労働』とは、眼前の例外的事態、新しい状況を打開するのに必要な知識が何かを考えだして、その場で知識を獲得(または知識を創造)して、それらを使う働き方のことです」

 野村氏のもとには「AIをどう使えばいいのかわかりません。教えてほしい」と相談に来るクライアントがあとを絶たないそうだ。
 野村氏は「AIは便利だが癖のある道具」だという。ただし、「実態を見ず、プロジェクトに適したAIを使わなければ意味はない。またAI自体を使いこなす知識がなければ、失敗に終わるのは当たり前。だからこそ、ビジネスの道具として役立つAIを選び、その使い方を具体的に知る人を育てることが大切」と、AIとの付き合い方をあらためて提案する。

 また、「仕事がAIに奪われる」というAI脅威論に対しても、野村氏はこう説明する。
「AIを使って生産性を上げていくということは、人減らしではない。例えば、10ヘクタールの水田の稲に600種類の病害虫がいるかどうか、全部チェックすると、何兆円もの人件費がかかる。しかし、ドローンを飛ばせば、わずかなコストでチェックができる」

 AIをビジネスに活用することについて、野村氏は「人々がAIを道具として上手に使いこなしながら、より充実感がある仕事を得ることで、幸せになれる社会を目指したい」という。

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関連著者・監修者

野村 直之(のむら なおゆき)

メタデータ株式会社代表取締役社長、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼担教員
1962年生まれ。1984年、東京大学工学部卒業、2002年、理学博士号取得(九州大学)。NECC&C研究所、ジャストシステム、法政大学、リコー勤務をへて、法政大学大学院客員教授。2005年、メタデータ(株)を創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、各種人工知能応用ソリューションを提供。この間、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員。MITでは、「人工知能の父」マービン・ミンスキーと一時期同室。同じくMITの言語学者、ノーム・チョムスキーとも議論。ディープラーニングを支えるイメージネット(ImageNet)の基礎となったワードネット(WordNet)の活用研究に携わり、日本の第5世代コンピュータ開発機構ICOTからスピン・オフした知識ベース開発にも参加。日々、様々なソフトウェア開発に従事するとともに、産業、生活、行政、教育など、幅広く社会にAIを活用する問題に深い関心を持つ。
著作など:WordNet:An Electronic Lexical Database,edited by Christiane D.Fellbaum,MIT Press,1998.(共著) このほか情報処理やAIの応用などに関する雑誌などへの寄稿も多数あり、講演活動も数多くこなす。

※本データは、小社での最新刊発行当時に掲載されていたものです。

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