日経サイエンス

日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

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SCIENTIFIC AMERICAN
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    NEWS SCAN
    地デジ&無線ネット
    「ホワイトスペース」をめぐる戦い
    未来の無線ネット接続が地デジ放送を妨害する?
    一足先を行く米国の事情に注目


     マイクロソフトやグーグルほか影響力の大きないくつかの技術企業は,超高速の無線インターネット接続法を見つけた。これに比べれば,現在のWi-Fi(ワイファイ)接続はまるでダイヤルアップのような遅さだ。
     しかし,これに大手テレビ局は強く反発している。というのも,この超高速接続は米国で来年に予定されている地上波デジタル放送の信号を妨害する恐れがあるからだ。米連邦通信委員会(FCC)が昨年に行った試験では,無線機器の近くにあったテレビが地デジ番組を受信できなくなる例がいくつかあった。


    空き帯域は巨大なチャンス

     紛争のタネは,テレビチャンネルの間にある未使用の周波数帯域,いわゆる「ホワイトスペース」だ。放送信号が互いに干渉しないように設けられているのだが,米国で2009年2月17日に地上波テレビ放送がデジタルに完全移行すると,このホワイトスペースがさらに拡大する(デジタル信号はアナログに比べて少ない帯域幅ですむので,放送電波の空きが増える)。
     技術企業はこれら干渉緩和周波数帯に巨大なチャンスを見て取っている。これらの周波数帯を利用すれば,コンピューターや携帯電話などの無線機器は毎秒数ギガビットのデータを転送可能になり(これに対しWi-Fiは数メガビット),メッシュネットワーク(無線機器が相互接続することで広がっていくネットワーク)や人里離れた地域でのブロードバンド接続,無線ホットスポット(無線LANによるネット接続が可能な場所)などを支える技術となる。
     「Wi-Fi 2.0と呼びたくなるだろう」というのは,グーグルの通信・メディア担当顧問弁護士ホイット(Rick Whitt)だ。グーグルは3月,ライバルのマイクロソフトが提案しているようなホワイトスペース検出技術を支持する意見書をFCCに提出した。グーグルが無線技術に関心を持っているのは,同社の携帯電話向け無料OS「Android(アンドロイド)」とモバイル機器向けソフトウエアを普及させたいと考えているからだ。同社はこれらソフトを今秋までに一般に提供する意向。


    信頼性を実証できず

     だが,テレビ局側にしてみれば,デジタル化投資の揚げ句に携帯電話とネット通信に放送を妨害されてはたまらない。せっかくのデジタルテレビの信頼性が,室内アンテナ利用のアナログ機とたいして変わらなくなってしまう。だから,グーグルなどがホワイトスペースを利用するには,まずFCCの許可を得る必要がある。ホワイトスペースを効果的に特定でき,放送信号や公開周波数帯をすでに使っている機器(ワイヤレスマイクなど)を妨害しないことを証明しなくてはならない。
     これまでに5つの企業・機関(アダプトラム,マイクロソフト,モトローラ,フィリップス・エレクトロニクス,シンガポールのインフォコム研究所)がFCCに試作機を提出した。いずれも「コグニティブ無線」という技術によって,他の信号を妨害せずに通信できる未使用周波数帯を特定しようとする。
     しかし,認可を得たものはまだ1つもない。テレビとワイヤレスマイクの信号を検出できた試作機はあるものの,送信機能つきの試作機は十分な信頼性を実証できていない。マイクロソフトは去る3月下旬,ホワイトスペースを検出する同社の機器が試験中に「突然停止した」ことを明らかにした。詳細は不明だが,同社の広報担当者は「FCCは試験を続行不能になり,この装置の試験を中止する決定を下した」という。同社の装置が審査途中で脱落したのは,2カ月間でこれが2度目だ。
     ホワイトスペースを自動的に検出し,他の利用者と干渉せずにそれらを一時的に利用できるような技術を最終的には開発できると各社は考えている。例えば北米フィリップス・リサーチの無線通信・ネットワーク部門でプロジェクトリーダーを務めるカラパリ(Kiran Challapali)は,フィリップスは信号検出のほかに干渉なしの送信も可能な新鋭機をFCCに間もなく提出する予定だという。
     ホイットは,そうしたシステムが検査に合格すれば,グーグルはホワイトスペースを利用できる一般ユーザー向け無線機器を2009年の年末商戦までに投入することになるだろうという。

    FCCの大儲け
     米連邦通信委員会(FCC)は今年3月,来年の地上波テレビ放送デジタル化に伴って開放される周波数帯の使用権について,初のオークションを行った。700メガヘルツ帯(698〜806メガヘルツ)に関するオークションで,この結果FCCは190億ドル(約2兆円)以上の収入をあげた。米国議会が予測した100億ドルを大きく上回り,FCCによると過去最大のオークションとなった。落札者にはAT&Tやベライゾン・ワイヤレスなど大手の携帯電話事業者が含まれる。獲得した帯域は,例えば携帯電話信号をより少ない電力でより遠くまで送るのに利用可能だ。


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    幹細胞
    iPS細胞で神経疾患を改善


     成体マウスの皮膚細胞を胚性幹細胞(ES細胞)に似た状態に初期化し,このiPS細胞を使ってラットのパーキンソン病を和らげる実験が成功した。
     ドーパミン産生ニューロンを破壊する毒素を健康なラットに注射してパーキンソン病に似た運動障害を引き起こした後,iPS細胞による治療を施した。ほとんどのラットは4週間以内にバランスと運動の統制が改善され,ドーパミンが高まったラットも1匹いた。
     もっとも,この方法を人間に適用するには多くの問題を解決しなくてはならない。まず,パーキンソン病は非常に複雑な病気であり,それを完全に再現したラットで実験する必要がある。また,皮膚細胞を変化させるのに使われたレトロウイルスはがんを引き起こすことが知られている。それでも,今回の研究はiPS細胞が脳に組み込まれて神経変性疾患を改善した初の例だ。米国科学アカデミー紀要オンライン版4月7日号に発表。

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    脳画像
    何を見てるかお見通し


     脳の視覚野の活動パターンをもとに,その人が何を見ているのかを判別する方法を,カリフォルニア大学バークレー校の研究グループが開発した。
     被験者に一連の画像を見せながら,その脳を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で撮影し,視覚野の活動を記録した。さまざまな部分の活動をモニターするとともに,視覚野のどこにどんな情報が対応している可能性が高いかを読み解くことによって,その人がどの画像を見ているのかを推定できたという。ただし,この方法で判別できるのは写真や音,動きなど,数学的にはっきりと表せるような情報に限られる。Nature誌オンライン版3月5日号に掲載。

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    健康
    アスベストの影響


     アスベストやシリカ(ケイ石粉)を吸い込むと肺を害することは古くから知られているが,そのダメージがどのように起こるのかは謎だった。最近,マウスを使った実験で重要な役者が浮かび上がった。体内で免疫系を強く活性化する「Nalp3インフラマソーム」というタンパク質複合体だ。
     アスベスト繊維が体内で分解されると最終的に活性酸素が作り出され,それがインフラマソームを活性化して,肺に炎症が起こるらしい。Nalp3インフラマソームを持たないマウスはアスベストへの反応が鈍かった。
     研究メンバーであるローザンヌ大学(スイス)のチョップ(Ju¨rg Tschopp)によると,肺の炎症はアスベスト曝露から10年後に明確に現れるとみられ,アスベストを吸入した人はこれを調べる検査を受けるべきだ。また,Nalp3インフラマソームは痛風など他の免疫応答疾患にも関係しているので,アスベスト吸入に伴う肺の炎症性疾患を痛風薬によって抑えられるかもしれないと推測している。Science誌オンライン版4月10日号に掲載。

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